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幸せなおちびちゃんが出てきて、最後までゆっくりできてます。 夢を見続けるゆっくりが出てきて、最後までゆっくりできてます。 虐待分少ないので脳内保管推奨の上にオチが読めまくります。 夢見るれいむ れいむには夢があった。 群れで一番でなくてもいい、ごく普通に、ごくありふれたゆっくりとして、幸せにゆっく りしたいと言う夢があった。 幼なじみのまりさと一緒に。とてもゆっくり出来るゆっくりで、黒くて大きいお帽子がと ってもすてきで、いつも自分のことを大事にしてくれるまりさ。原っぱをかけまわって、一 緒にむーしゃむーしゃして、すーりすーりして、一緒にゆっくりして。 まりさの作ったとてもゆっくり出来るおうちでふぁーすとちゅっちゅ。 夜になったら、ろまんてっくな闇の中で……。 秋の実りを蓄えて、冬の訪れを待つばかりの巣の中で、どんな子供達に育って欲しいか、 一緒に語らうのだ。 まりさとの可愛い赤ちゃんが産まれ、それはそれはゆっくりできるすばらしい赤ちゃん で。頭の上で、茎に繋がって次第に大きく成長していくおちびちゃんを、まりさはきっと 微笑ましく眺めるに違いない。だから、「とってもゆっくりしたおちびちゃん達だね」と 言って、ゆっくりとしよう。生まれる時も、とってもやんちゃで、少し危なっかしいのだ けれど、それでも一生懸命生きようと、生まれようとする大切な命を、まりさは優しく受 けとめて上げるのだ。初めて「ゆっきゅりしていってにぇ!」と言われたら、まりさと一 緒に「ゆっくりしていってね!」と言ってあげたい。すーりすーりしてあげて、くすぐっ たいと身をよじる赤ちゃんをぺーろぺーろしてあげたい。お腹がすいたと泣き出したら、 茎を柔らかくして食べさせてあげる。 そして「しあわしぇー!」と生きる喜びにうちふるえる赤ちゃんを、まりさは微笑まし く眺めるだろう。そんなまりさに、愛おしい思いを込めて、すーりすーりしたい。ゆっく りが生きていくには楽しい事ばかりじゃないけれど、辛い事しかないけれど、でもだから こそ、幸せを感じるゆっくりに育って欲しい。 春になれば、まりさは狩りに出かけることが多くなる。おちびちゃんたちはきっと、悲 しくて泣き出してしまうだろう。でもまりさが沢山ごちそうを持って帰れば、みな尊敬の 目を向けるはずだ。可愛いおちびちゃん達。 まりさは狩がおじょうずだけど、獲物が捕れない日もあるだろう。そんな時、まりさを 慰めてあげられる優しい子に育って欲しい。気落ちしているまりさの隣で、家族そろって すーりすーりすれば、些細な悩みなんて吹き飛んでしまうだろう。 ある木漏れ日の差す暖かい日に、一番上のおちびちゃんが、ゆっくり飛び跳ねることが 出来るようになるのだろう。まりさと一緒に微笑みながら、「すごくゆっくりできるね!」 と褒めて上げたい。他の妹たちも、みんな飛び跳ねようとして、うまく出来ないかもしれ ないけれど、それでもみなが自慢のおちびちゃんだ。その日はみんなでひときわ高い声で、 「ゆっくりしていってね!」とお休みを言おう。 食べられる虫さんやお花さんの見分け方を教える時、恐いれみりゃやれいぱーの話をす る時、みんな一生懸命にお勉強をするに違いない。きっとみんなとてもゆっくり出来るゆ っくりになるよ、と、子供が寝静まった後まりさに報告しよう。きっとまりさははにかみ ながら、「だってまりさとれいむのじまんのおちびちゃんだからね!」と、静かにすーり すーりしてくれるのだ。 暖かさが増してきたら、みんなで広場に出かけよう。同じ幼なじみのぱちゅりーやあり す達が、沢山の家族が思い思いにゆっくりしているだろう。彼女の子供達も、きっと凄く ゆっくりしているのだろう。そうして子供達は、姉妹の他に遊び相手を見つけるのだ。 中には、かけがえのない相手を見つける子もいるだろう。れいむとまりさのように。 お日様の下で、ちょうちょさんを追って、あるいはかくれんぼをして、一生懸命遊んだ ら、それもとてもゆっくり出来る為のお勉強だ。はしゃぎすぎて冒険に出てしまい、大人 達が探し回る事になるかもしれない。日が暮れるまで探し回って、ようやく川のほとりで ゆんゆん泣いている子を、叱るでなしにすーりすーりしてやろう。そしてそれはお姉さん のまりさで、その日に仲良くなったれいむなのだろう。少しくらいやんちゃなほうが、き っと小さい頃のまりさに似ているのだ。 おうちに帰って、まりさにそのことを話すと、やっぱり照れてしまうのだろう。そして まりさとれいむが出会った、一番大切な思い出を、我が子のせがむままに話してやるのだ。 子供達は目を輝かせて、まりさは顔を真っ赤にして、それでもとてもゆっくりした夜が過 ごせるのだろう。 だんだん暑くなってきて、食べるものがいっぱいに増えたら、おちびちゃんをつれて狩 りの練習。初めて本格的な狩りをするのだから、さすがの子供達も緊張気味なのだ。むし さんはいるかな。ちょうちょさんは待っていてくれるかな。 お姉さんが「まりさはきのこさんを取るよ!」と言うと、妹のれいむは「じゃあね、じ ゃあれいむはちょうちょさん!」と、みんなで目標を言い合うのだ。 ……ぇ、ぃ…… 森の中で、むしさんの声がすごいひびく。 まりさの狩りの特訓は少し厳しくて、でも一生懸命な子供達は少しづつだけれどもコツ を覚え始める。妹のれいむは日が傾くまでちょうちょさんを追い続けて、みんなが諦めよ うと言いかけたその時、姉のまりさがぱっくりと取ってやるのだ。にっこりと微笑んで妹 にちょうちょさんを渡す姉のまりさは、妹達から尊敬の眼差しを受けて、照れてしまうに 違いない。 本人は、夕日さんが赤いだけだよと言い張るのだけれど、そんな姉まりさに、まりさは 力強くすーりすーりをして上げるのだ。 ……ぉぉ、……ねぇぇ…… 夜は風が強くなる。 入り口が飛ばないように注意しなければならない。れみりゃやれいぱーに襲われてしま うからだ。けれどまりさは自信満々に、「とても丈夫に作ったからだいじょうぶだよ! どんなゆっくりだって入ってこれないように、わなさんだって作ったからね!」と言って いたので、何も心配いらない。 とは言え、将来子供達が住まうおうちがそこまで丈夫であるとは限らないので、出来う る限りのことを教えてやるのだ。恐い話を聞かされて、ゆっくり眠れなくなった子供達は、 きっと泣きながら、自分たちに寄り添ってくるだろう。すーりすーりしあっているうちに、 子供達は夢の中へと旅立つことになるだろう。気持ちよすぎて、自分でもうつらうつらと してしまい、まりさは呆れながらも、ゆっくりお休みと言ってくれるのだ。 明かりと言えばお月さまの青白い光だけで、星さんはあまり出ていない夜で、それは開 け放たれた入り口からよく見えて、獣のような顔をしたありすとれみりゃが入り込んでき たのだ。そして、ああこれは夢だなと思って、先ほど子供達に恐い話を聞かせたから、自 分で夢を見てしまったのだと苦笑しつつ、だってまりさが自信満々で仕掛けた罠が破られ るはずもないのだから。だずげででいぶううううとまりさは叫んでいるけど、なにかぬち ょぬちょするものに絡め取られて身動きが取れなくなっている。 子供達はと見回すと、いつの間にか居なくなっていて、みんな逃げられたんだねと、だ から夢なのだと、もう一度安心したところで目が覚めるのだ。 今日もゆっくり出来るのだと教えてくれる暖かい日差しの中で、まりさや子供達にうな されていたことをからかわれて、でもとても安心してゆっくり出来るのだ。 風が強かったのでその日は一日、おうちのなかでおゆうぎ。姉のまりさは踊りが上手。 真ん中のありすは踊りが上手。妹のれいむはお歌が上手で、みんなとてもゆっくりしてい るよと褒めて上げるのだ。 その日は大事に貯めてあったごちそうを出して、みんなでゆっくりご飯を食べるのだ。 綺麗なお花さんに、ぴかぴかしたむしさん。とてもゆっくり出来るご飯になって、子供達 もみんな満足するだろう。 みんながお花さん綺麗だったねと言うと、まりさはつい口を滑らせて、れいむもお花さ んみたいに綺麗だよと言ってしまうのだ。 幼なじみだったまりさと自分がつがいになった切っ掛けは、綺麗なお花さんだったのだ。 きらきらと光る夕日を後ろに、まりさが綺麗なお花さんをプレゼントしてくれたことは、 今でも忘れられない思い出だった。「一緒に暮らそう、れいむ! ぜったい、ぜったい幸 せに、ゆっくりにしてあげるから!」 いつも厳しいまりさがそう言ったのよ、と子供達に教えてやろう。子供達は頬を染めな がらも、幸せを祝福してくれるだろう。その後は、昔見つけた宝物を子供達に自慢してや るのだろう。まりさの一番の宝物はれいむだよ、と言って欲しいな。でも多分、プロポー ズした時に見つけた綺麗な石さんを、まりさは取り出すのだろう。 それは、一番の宝物はれいむだよ、そう言っているのと同じなのに。 ……ぃぃ……ょぉぉ…… 夜はまだ、風が強い。 恐い夢を見ないよう、まりさに寄り添って眠るだろう。すーりすーりとしてくるまりさ に、とてもゆっくりしているわと言われて照れるのだろう。一緒にすっきりしまじょうね と言われて久しぶりに高ぶってしまう。 もうすぐ実りの秋だし、子供達に妹が出来るのもいいかもしれない。狩りもうまくなっ たし、むしろ小さいあかちゃんが居れば冬ごもりの間、子供達はもっとゆっくり出来るか も知れない。ああでもやっぱり。 心地よい闇の中で、やはり夢を見た。 ……どぼじ……げでぐでだ…… あたま がおもい つたがはえて おちびちゃ ん ゆがんだ おかお だいぶくろいけど れいむはおちびちゃんと おちびちゃ ん、おちびちゃ……どこ? おちびちゃ…… ……の……ちびちゃ…… 秋になると、みなで一斉に狩りをする。 姉のまりさも真ん中のありすも妹のれいむも、みな狩りがお上手に育っているだろう。 でもやはり、まりさによく似た姉のまりさは、ぬきんでて狩りがお上手のはずだ。 自慢のかちゅーしゃに沢山の獲物をしまい込んで、得意げに跳ねるのだろう。群れに餌を 納めても、まだ十分に蓄えが出来るのだ。これなら妹達を増やしてもいいかもしれないね。 広場で仲良くなった家族と一緒に、ゆっくりと狩りをする。いつも一緒なのは、やはり ぱちゅりーとありすが番いになった、幼なじみの家族だ。四人で一緒に、小さい頃はよく 遊んでいた。大人になって、独り立ちして、家族を持ってからも、交流を続けていた。 ずっと本当は、ありすはまりさが好きだったんじゃないかなあ、と思っていた。 まりさにプロポーズされた後、ありすとぱちゅりーの二人には報告しに行ったのだ。そ のとき、少しだけありすが悲しそうな表情をしたのだった。もしかしたら、自分たちのた めに身を引いたのだろうか、と勘ぐってしまう。ありすはとても賢くて、友達思いだから。 でもすぐに笑顔になって、プロポーズのことを根堀り葉堀聞かれたのだ。二人して頬を染 めていると、とってもとかいはね、と褒められ、くすぐったかった。 だからと言うわけじゃあないけれど、ありすとぱちゅりーはすっごくお似合いに見える。 とても賢い二人は、とてもゆっくりとしていて、だからいつも四人で悩みや夢を語り合っ た。ありすはいつも引っ込み事案で、それはどうやら親がれいぱーだったことが原因だと、 知り合ってしばらく後で聞かされた。本人もいつれいぱーになってしまうか判らないと、 少し疲れた微笑みを浮かべていたけれど、悩みすぎだよ、とみんなで慰めた。ありすはあ りすで、れいぱーじゃないから。でも、もしれいぱーになったら、ああ、歪んだお顔です っきりーするんだろうなあ、と、とても不安になったことを覚えている。 湖に行った時に、自分のお顔を歪めてみたけれど、とてもじゃないけれどれいぱーみた いな表情は作れなかった。きっとゆっくり出来ないのだろうと、子供ながら身震いしたも のだ。 野いちごさん、ぶどうさん、かきさん。 秋は実りがいっぱいだ。その分、可愛い子供達の笑顔も、いっぱいになる。おうちにの 中で、ささやかなパーティーを開く。子供達が生まれて、もう一年が過ぎるのだ。「みん な、春になったらもう立派なゆっくりだよ!」そう告げるまりさの、誇らしさの中にうれ しさと、巣立ちを控えた悲しさを感じ取れるのは、多分自分だけなのだ。 子供達が寝静まってからまりさに寄り添うと、まりさは声を立てずに泣き出してしまう のだろう。すーりすーりをして、ぺーろぺーろをして、次第に高ぶる心と体に身を任せて。 ああ、でも子供達が起きないかしら。呟いたからか、とかいはだから大丈夫だよ、と言う。 闇の中で綺麗に光る金色の髪の毛をはーぐはーぐしながら、くすぐったがるまりさの頬 をすーりすーりしながら、自慢のお帽子をぺーろぺーろしながら、体中が幸せな感覚に包 まれる。空を飛んでいるよりも、湖を自由に泳いでいるよりも、もっと素敵な浮き上がる 感覚に、次第に意識が闇の中に飲み込まれて。 ああまたあの夢が。ありすがまりさとれいむにのしかかっている夢。れいむを犯してい るはずなのに、顔の一部分だけがまりさになっている。奇妙な夢だなあと思ったらすぐに 現実に引き戻される。 お顔をすり合わせて、どんどん振動が強くなって、ゆ”っ、ゆ”っとうめき声なのか快 楽の叫びなのかが漏れ出でて、まりさはよだれを垂らしながらお顔を歪めて、二人一緒に すっきりー! 闇の中で、寝入ってしまったまりさの頭からツタが生えてくる。しゅるしゅると生える 何本ものツタに、新しい命が宿るのだ。まだ実は育っていないけれども、このおちびちゃ んたちもゆっくり出来る子に育ってくれるのだろう。次第に黒ずんで行くまりさを眺めな がらふと、幼なじみのありすを思い出した。 彼女はれいぱーになることを恐れていた。幸せなすっきりー! が出来るのだろうか。 幸せに、ゆっくり出来ているのだろうか。気にしても仕方がないことだ、自分に出来るこ とは何もないが、でも親友でいることは出来るのだ。 幸せを噛み締めて、ゆっくり元気に育っている我が子を見回す。暗くて見えないが、子供 達はみな幸せそうに寝入っている。 まりさに似て芯の通った姉のまりさ。彼女はきっと群れのリーダーとなるだろう。よく気 が利く真ん中のありす。きっととてもゆっくり出来るだろう。妹のれいむは少しどじだけれ ど、幼なじみのまりさと幸せな家庭を築くに違いない。みな綺麗なかちゅーしゃがとてもよ く似合う、素晴らしいゆっくりに育ってくれた。 もう、すぐに冬がくる。 まりさが作ってくれたこの巣は、とても頑丈な入り口で、ああでもいつの間にか壊れちゃ っているから直さないと。巣の中も汚れている。いくつかの黒い塊がところどころに、ああ、 あれはおちびちゃんだったっけ。開け放たれた入り口の近くにひときわ大きい塊が、とても ゆっくりした表情の、黒く歪んだまりさが。 まりさ。……まりさ。……。 …… ……しゃん…… ……おきゃあしゃん! …… 「もう、おきゃあしゃんってば! ありしゅはありしゅよ! まりしゃじゃにゃいわよ!」 「しょうよ、ときゃいはなありしゅはれいみゅじゃないわ!」 「しょれにおきゃあしゃんはれいみゅじゃにゃいよ! しっかりしてよね、ありしゅおきゃ あしゃん!」 おちびちゃん達はたまに判らないことを言う。 お母さんはありすじゃなくてれいむだよ。 ありすはれいぱーだよ。 親友を犯して殺して巣を乗っ取るれいぱーだよ。 だかられいむはれいむで、ありすじゃあないんだよ……。 れいむはれいむで、ありすじゃあ、ない、よ。 今宵も闇に、夢を見る。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3653.html
幸せなおちびちゃんが出てきて、最後までゆっくりできてます。 夢を見続けるゆっくりが出てきて、最後までゆっくりできてます。 虐待分少ないので脳内保管推奨の上にオチが読めまくります。 夢見るれいむ れいむには夢があった。 群れで一番でなくてもいい、ごく普通に、ごくありふれたゆっくりとして、幸せにゆっく りしたいと言う夢があった。 幼なじみのまりさと一緒に。とてもゆっくり出来るゆっくりで、黒くて大きいお帽子がと ってもすてきで、いつも自分のことを大事にしてくれるまりさ。原っぱをかけまわって、一 緒にむーしゃむーしゃして、すーりすーりして、一緒にゆっくりして。 まりさの作ったとてもゆっくり出来るおうちでふぁーすとちゅっちゅ。 夜になったら、ろまんてっくな闇の中で……。 秋の実りを蓄えて、冬の訪れを待つばかりの巣の中で、どんな子供達に育って欲しいか、 一緒に語らうのだ。 まりさとの可愛い赤ちゃんが産まれ、それはそれはゆっくりできるすばらしい赤ちゃん で。頭の上で、茎に繋がって次第に大きく成長していくおちびちゃんを、まりさはきっと 微笑ましく眺めるに違いない。だから、「とってもゆっくりしたおちびちゃん達だね」と 言って、ゆっくりとしよう。生まれる時も、とってもやんちゃで、少し危なっかしいのだ けれど、それでも一生懸命生きようと、生まれようとする大切な命を、まりさは優しく受 けとめて上げるのだ。初めて「ゆっきゅりしていってにぇ!」と言われたら、まりさと一 緒に「ゆっくりしていってね!」と言ってあげたい。すーりすーりしてあげて、くすぐっ たいと身をよじる赤ちゃんをぺーろぺーろしてあげたい。お腹がすいたと泣き出したら、 茎を柔らかくして食べさせてあげる。 そして「しあわしぇー!」と生きる喜びにうちふるえる赤ちゃんを、まりさは微笑まし く眺めるだろう。そんなまりさに、愛おしい思いを込めて、すーりすーりしたい。ゆっく りが生きていくには楽しい事ばかりじゃないけれど、辛い事しかないけれど、でもだから こそ、幸せを感じるゆっくりに育って欲しい。 春になれば、まりさは狩りに出かけることが多くなる。おちびちゃんたちはきっと、悲 しくて泣き出してしまうだろう。でもまりさが沢山ごちそうを持って帰れば、みな尊敬の 目を向けるはずだ。可愛いおちびちゃん達。 まりさは狩がおじょうずだけど、獲物が捕れない日もあるだろう。そんな時、まりさを 慰めてあげられる優しい子に育って欲しい。気落ちしているまりさの隣で、家族そろって すーりすーりすれば、些細な悩みなんて吹き飛んでしまうだろう。 ある木漏れ日の差す暖かい日に、一番上のおちびちゃんが、ゆっくり飛び跳ねることが 出来るようになるのだろう。まりさと一緒に微笑みながら、「すごくゆっくりできるね!」 と褒めて上げたい。他の妹たちも、みんな飛び跳ねようとして、うまく出来ないかもしれ ないけれど、それでもみなが自慢のおちびちゃんだ。その日はみんなでひときわ高い声で、 「ゆっくりしていってね!」とお休みを言おう。 食べられる虫さんやお花さんの見分け方を教える時、恐いれみりゃやれいぱーの話をす る時、みんな一生懸命にお勉強をするに違いない。きっとみんなとてもゆっくり出来るゆ っくりになるよ、と、子供が寝静まった後まりさに報告しよう。きっとまりさははにかみ ながら、「だってまりさとれいむのじまんのおちびちゃんだからね!」と、静かにすーり すーりしてくれるのだ。 暖かさが増してきたら、みんなで広場に出かけよう。同じ幼なじみのぱちゅりーやあり す達が、沢山の家族が思い思いにゆっくりしているだろう。彼女の子供達も、きっと凄く ゆっくりしているのだろう。そうして子供達は、姉妹の他に遊び相手を見つけるのだ。 中には、かけがえのない相手を見つける子もいるだろう。れいむとまりさのように。 お日様の下で、ちょうちょさんを追って、あるいはかくれんぼをして、一生懸命遊んだ ら、それもとてもゆっくり出来る為のお勉強だ。はしゃぎすぎて冒険に出てしまい、大人 達が探し回る事になるかもしれない。日が暮れるまで探し回って、ようやく川のほとりで ゆんゆん泣いている子を、叱るでなしにすーりすーりしてやろう。そしてそれはお姉さん のまりさで、その日に仲良くなったれいむなのだろう。少しくらいやんちゃなほうが、き っと小さい頃のまりさに似ているのだ。 おうちに帰って、まりさにそのことを話すと、やっぱり照れてしまうのだろう。そして まりさとれいむが出会った、一番大切な思い出を、我が子のせがむままに話してやるのだ。 子供達は目を輝かせて、まりさは顔を真っ赤にして、それでもとてもゆっくりした夜が過 ごせるのだろう。 だんだん暑くなってきて、食べるものがいっぱいに増えたら、おちびちゃんをつれて狩 りの練習。初めて本格的な狩りをするのだから、さすがの子供達も緊張気味なのだ。むし さんはいるかな。ちょうちょさんは待っていてくれるかな。 お姉さんが「まりさはきのこさんを取るよ!」と言うと、妹のれいむは「じゃあね、じ ゃあれいむはちょうちょさん!」と、みんなで目標を言い合うのだ。 ……ぇ、ぃ…… 森の中で、むしさんの声がすごいひびく。 まりさの狩りの特訓は少し厳しくて、でも一生懸命な子供達は少しづつだけれどもコツ を覚え始める。妹のれいむは日が傾くまでちょうちょさんを追い続けて、みんなが諦めよ うと言いかけたその時、姉のまりさがぱっくりと取ってやるのだ。にっこりと微笑んで妹 にちょうちょさんを渡す姉のまりさは、妹達から尊敬の眼差しを受けて、照れてしまうに 違いない。 本人は、夕日さんが赤いだけだよと言い張るのだけれど、そんな姉まりさに、まりさは 力強くすーりすーりをして上げるのだ。 ……ぉぉ、……ねぇぇ…… 夜は風が強くなる。 入り口が飛ばないように注意しなければならない。れみりゃやれいぱーに襲われてしま うからだ。けれどまりさは自信満々に、「とても丈夫に作ったからだいじょうぶだよ! どんなゆっくりだって入ってこれないように、わなさんだって作ったからね!」と言って いたので、何も心配いらない。 とは言え、将来子供達が住まうおうちがそこまで丈夫であるとは限らないので、出来う る限りのことを教えてやるのだ。恐い話を聞かされて、ゆっくり眠れなくなった子供達は、 きっと泣きながら、自分たちに寄り添ってくるだろう。すーりすーりしあっているうちに、 子供達は夢の中へと旅立つことになるだろう。気持ちよすぎて、自分でもうつらうつらと してしまい、まりさは呆れながらも、ゆっくりお休みと言ってくれるのだ。 明かりと言えばお月さまの青白い光だけで、星さんはあまり出ていない夜で、それは開 け放たれた入り口からよく見えて、獣のような顔をしたありすとれみりゃが入り込んでき たのだ。そして、ああこれは夢だなと思って、先ほど子供達に恐い話を聞かせたから、自 分で夢を見てしまったのだと苦笑しつつ、だってまりさが自信満々で仕掛けた罠が破られ るはずもないのだから。だずげででいぶううううとまりさは叫んでいるけど、なにかぬち ょぬちょするものに絡め取られて身動きが取れなくなっている。 子供達はと見回すと、いつの間にか居なくなっていて、みんな逃げられたんだねと、だ から夢なのだと、もう一度安心したところで目が覚めるのだ。 今日もゆっくり出来るのだと教えてくれる暖かい日差しの中で、まりさや子供達にうな されていたことをからかわれて、でもとても安心してゆっくり出来るのだ。 風が強かったのでその日は一日、おうちのなかでおゆうぎ。姉のまりさは踊りが上手。 真ん中のありすは踊りが上手。妹のれいむはお歌が上手で、みんなとてもゆっくりしてい るよと褒めて上げるのだ。 その日は大事に貯めてあったごちそうを出して、みんなでゆっくりご飯を食べるのだ。 綺麗なお花さんに、ぴかぴかしたむしさん。とてもゆっくり出来るご飯になって、子供達 もみんな満足するだろう。 みんながお花さん綺麗だったねと言うと、まりさはつい口を滑らせて、れいむもお花さ んみたいに綺麗だよと言ってしまうのだ。 幼なじみだったまりさと自分がつがいになった切っ掛けは、綺麗なお花さんだったのだ。 きらきらと光る夕日を後ろに、まりさが綺麗なお花さんをプレゼントしてくれたことは、 今でも忘れられない思い出だった。「一緒に暮らそう、れいむ! ぜったい、ぜったい幸 せに、ゆっくりにしてあげるから!」 いつも厳しいまりさがそう言ったのよ、と子供達に教えてやろう。子供達は頬を染めな がらも、幸せを祝福してくれるだろう。その後は、昔見つけた宝物を子供達に自慢してや るのだろう。まりさの一番の宝物はれいむだよ、と言って欲しいな。でも多分、プロポー ズした時に見つけた綺麗な石さんを、まりさは取り出すのだろう。 それは、一番の宝物はれいむだよ、そう言っているのと同じなのに。 ……ぃぃ……ょぉぉ…… 夜はまだ、風が強い。 恐い夢を見ないよう、まりさに寄り添って眠るだろう。すーりすーりとしてくるまりさ に、とてもゆっくりしているわと言われて照れるのだろう。一緒にすっきりしまじょうね と言われて久しぶりに高ぶってしまう。 もうすぐ実りの秋だし、子供達に妹が出来るのもいいかもしれない。狩りもうまくなっ たし、むしろ小さいあかちゃんが居れば冬ごもりの間、子供達はもっとゆっくり出来るか も知れない。ああでもやっぱり。 心地よい闇の中で、やはり夢を見た。 ……どぼじ……げでぐでだ…… あたま がおもい つたがはえて おちびちゃ ん ゆがんだ おかお だいぶくろいけど れいむはおちびちゃんと おちびちゃ ん、おちびちゃ……どこ? おちびちゃ…… ……の……ちびちゃ…… 秋になると、みなで一斉に狩りをする。 姉のまりさも真ん中のありすも妹のれいむも、みな狩りがお上手に育っているだろう。 でもやはり、まりさによく似た姉のまりさは、ぬきんでて狩りがお上手のはずだ。 自慢のかちゅーしゃに沢山の獲物をしまい込んで、得意げに跳ねるのだろう。群れに餌を 納めても、まだ十分に蓄えが出来るのだ。これなら妹達を増やしてもいいかもしれないね。 広場で仲良くなった家族と一緒に、ゆっくりと狩りをする。いつも一緒なのは、やはり ぱちゅりーとありすが番いになった、幼なじみの家族だ。四人で一緒に、小さい頃はよく 遊んでいた。大人になって、独り立ちして、家族を持ってからも、交流を続けていた。 ずっと本当は、ありすはまりさが好きだったんじゃないかなあ、と思っていた。 まりさにプロポーズされた後、ありすとぱちゅりーの二人には報告しに行ったのだ。そ のとき、少しだけありすが悲しそうな表情をしたのだった。もしかしたら、自分たちのた めに身を引いたのだろうか、と勘ぐってしまう。ありすはとても賢くて、友達思いだから。 でもすぐに笑顔になって、プロポーズのことを根堀り葉堀聞かれたのだ。二人して頬を染 めていると、とってもとかいはね、と褒められ、くすぐったかった。 だからと言うわけじゃあないけれど、ありすとぱちゅりーはすっごくお似合いに見える。 とても賢い二人は、とてもゆっくりとしていて、だからいつも四人で悩みや夢を語り合っ た。ありすはいつも引っ込み事案で、それはどうやら親がれいぱーだったことが原因だと、 知り合ってしばらく後で聞かされた。本人もいつれいぱーになってしまうか判らないと、 少し疲れた微笑みを浮かべていたけれど、悩みすぎだよ、とみんなで慰めた。ありすはあ りすで、れいぱーじゃないから。でも、もしれいぱーになったら、ああ、歪んだお顔です っきりーするんだろうなあ、と、とても不安になったことを覚えている。 湖に行った時に、自分のお顔を歪めてみたけれど、とてもじゃないけれどれいぱーみた いな表情は作れなかった。きっとゆっくり出来ないのだろうと、子供ながら身震いしたも のだ。 野いちごさん、ぶどうさん、かきさん。 秋は実りがいっぱいだ。その分、可愛い子供達の笑顔も、いっぱいになる。おうちにの 中で、ささやかなパーティーを開く。子供達が生まれて、もう一年が過ぎるのだ。「みん な、春になったらもう立派なゆっくりだよ!」そう告げるまりさの、誇らしさの中にうれ しさと、巣立ちを控えた悲しさを感じ取れるのは、多分自分だけなのだ。 子供達が寝静まってからまりさに寄り添うと、まりさは声を立てずに泣き出してしまう のだろう。すーりすーりをして、ぺーろぺーろをして、次第に高ぶる心と体に身を任せて。 ああ、でも子供達が起きないかしら。呟いたからか、とかいはだから大丈夫だよ、と言う。 闇の中で綺麗に光る金色の髪の毛をはーぐはーぐしながら、くすぐったがるまりさの頬 をすーりすーりしながら、自慢のお帽子をぺーろぺーろしながら、体中が幸せな感覚に包 まれる。空を飛んでいるよりも、湖を自由に泳いでいるよりも、もっと素敵な浮き上がる 感覚に、次第に意識が闇の中に飲み込まれて。 ああまたあの夢が。ありすがまりさとれいむにのしかかっている夢。れいむを犯してい るはずなのに、顔の一部分だけがまりさになっている。奇妙な夢だなあと思ったらすぐに 現実に引き戻される。 お顔をすり合わせて、どんどん振動が強くなって、ゆ”っ、ゆ”っとうめき声なのか快 楽の叫びなのかが漏れ出でて、まりさはよだれを垂らしながらお顔を歪めて、二人一緒に すっきりー! 闇の中で、寝入ってしまったまりさの頭からツタが生えてくる。しゅるしゅると生える 何本ものツタに、新しい命が宿るのだ。まだ実は育っていないけれども、このおちびちゃ んたちもゆっくり出来る子に育ってくれるのだろう。次第に黒ずんで行くまりさを眺めな がらふと、幼なじみのありすを思い出した。 彼女はれいぱーになることを恐れていた。幸せなすっきりー! が出来るのだろうか。 幸せに、ゆっくり出来ているのだろうか。気にしても仕方がないことだ、自分に出来るこ とは何もないが、でも親友でいることは出来るのだ。 幸せを噛み締めて、ゆっくり元気に育っている我が子を見回す。暗くて見えないが、子供 達はみな幸せそうに寝入っている。 まりさに似て芯の通った姉のまりさ。彼女はきっと群れのリーダーとなるだろう。よく気 が利く真ん中のありす。きっととてもゆっくり出来るだろう。妹のれいむは少しどじだけれ ど、幼なじみのまりさと幸せな家庭を築くに違いない。みな綺麗なかちゅーしゃがとてもよ く似合う、素晴らしいゆっくりに育ってくれた。 もう、すぐに冬がくる。 まりさが作ってくれたこの巣は、とても頑丈な入り口で、ああでもいつの間にか壊れちゃ っているから直さないと。巣の中も汚れている。いくつかの黒い塊がところどころに、ああ、 あれはおちびちゃんだったっけ。開け放たれた入り口の近くにひときわ大きい塊が、とても ゆっくりした表情の、黒く歪んだまりさが。 まりさ。……まりさ。……。 …… ……しゃん…… ……おきゃあしゃん! …… 「もう、おきゃあしゃんってば! ありしゅはありしゅよ! まりしゃじゃにゃいわよ!」 「しょうよ、ときゃいはなありしゅはれいみゅじゃないわ!」 「しょれにおきゃあしゃんはれいみゅじゃにゃいよ! しっかりしてよね、ありしゅおきゃ あしゃん!」 おちびちゃん達はたまに判らないことを言う。 お母さんはありすじゃなくてれいむだよ。 ありすはれいぱーだよ。 親友を犯して殺して巣を乗っ取るれいぱーだよ。 だかられいむはれいむで、ありすじゃあないんだよ……。 れいむはれいむで、ありすじゃあ、ない、よ。 今宵も闇に、夢を見る。
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ゲスゆ有 「ゆっくりしていってね!」 日課である朝の散歩中に突然足元から甲高い声が上ってきた。 なんだろうと思いながら……まぁ既に予想はついてるが……足元を見下ろしてみると、やはりというか なんというか、やたらとぷにぷにしてそうな生首がこっちを見上げてきていた。 「やっぱりゆっくりか」 「れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」 そう言ってれいむは誇らしげに胸を張る。 「はいはい、ゆっくりしていってねっと」 俺はいかにも気だるそうな感じを滲ませながらそう言って、せかせかとれいむの前を立ち去ろうとする。 が、そんな俺の様子を見てれいむは慌て、ゆっくりにあるまじきゆっくりしてなさを発揮して俺の前に 立ちはだかり、こう言った。 「まってね! にんげんさんはれいむにあまあまをおいていってね!」 それを聞いて俺はファッキューメーンと思った。いや別にゆっくりは男じゃないけれども、素直で可愛い ゆっくりが好きである俺をがっかりさせる言葉の一つだったからだ。 無視してやってもよかったのだが、ついてこられても迷惑だ。 なんとか口でやりこめて乗り切ろうと思い、下を向いてこう言った。 「何でさ」 「ゆ? わからないの?」 俺の言葉を受けたれいむは心底不思議そうに頭の上に疑問符を浮かべて小首を傾げる。 あまあま……要するに人間のお菓子の要求をする野良ゆっくりは多い。 ほぼ全てのゆっくりは甘い物が大好きである。加えてゆっくりは何事も自分の都合のいいように解釈する 悪癖があり、飼いゆっくりの飼い主がゆっくりにご飯をやっているのを見ただけで頭と性格の悪い野良などは 人間はゆっくりの奴隷であると勘違いするなどよくある話だ。 そうでなくても、『ゆっくりはゆっくりしていればみんなをゆっくりさせられる』という意味不明の信念を 持っていたりもするので、『ゆっくりした自分ならお菓子をくれるはずだ』という理屈から人間にあまあまを 要求する事などはざらにあるのだ。 俺を苛立たせない理由ならいい。ゆっくりにお菓子をやる物好きな爺さんがその辺にいて、人間はお菓子を くれるものだと思い込んでしまったとか、そういう俺にも納得しうる理由ならまぁいいや。俺はそう思い ながら、れいむの言葉を待った。 が、しかし。このれいむが語った『理由』は―― 「じゃあおしえてあげるね! れいむはしんぐるまざーなんだよ! すごくかわいそうなんだよ! だから やさしくしてあげないとだめなんだよ!」 俺の神経を卸し金で容赦なく削り取るような、吐き気を催すクソのようなものだった。 「お前のような奴がいるから戦争が無くならないんだ!(?)」 反射的に右の拳が足元のれいむに伸び、そのもち肌に突き刺さった。悲鳴を上げる暇すらなく、れいむは バウンドして空に舞い上がる。 おそらをとんでるみたい。シェイクされた頭でそんな事を考えているのであろうれいむの脳天を、追撃の ネリチャギが襲う。倒れている相手に頭の側から発動すればザコ即死がつく便利な技だ。 「ゆぶぇ?!」 衝撃で右の眼球を破裂させながら、れいむが叫び声を上げて地面に叩きつけられた。俺の足が頭の上に 乗っているので、今度はバウンドしない。 俺はそいつの頭から足をどけると、靴を脱いでそこにこびりついた餡子をそのへんの壁に擦り付けた。 餡子のついた靴でその辺を歩いたら虐待趣味の変態だと思われてしまうからだ。 と、そんな事をしている内に、既にずたぼろになっているれいむが起き上がる元気を取り戻していた。 もう相手にしないぞ、こんな薄汚いボロクズ。俺はそう心に決め、 「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ?! でいぶはじんぐるまざーなんだよぉ?! だがらゆっぐりざぜで あげないどだめなんだよぉぉぉぉぉ?!」 僅か二秒で決心した事実を闇に葬り去り、れいむの頭に鋭いチョップを浴びせた。 「ゆびぇ?! いだいぃぃぃぃぃ!! どぼじでごんなごぞずるのぉぉぉぉ?! がわいぞうなでいぶは ゆっぐりざぜであげなぎゃだめなんだよぉぉぉぉぉぉ?!」 悲鳴と共に、無くなった右目から涙と混じった液状の餡子がリズミカルに溢れ出す。 俺はそのれいむを掴みあげ、横っ面を思いっきり引っぱたいた。 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぎぇ?!」 「お前みたいな!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆがぁ?!」 「自分ばっかりゆっくりしたいとか!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぐぅ?!」 「そんな考えのゲスがいるから!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆげぇ?!」 「他の可愛いゆっくりまで!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆごぉ?!」 「害獣呼ばわりっ!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆぎゃぁ?!」 「されちまうんだ!」 左頬を打つ。頬からびしゃりと音が響く。 「ゆっぐ、えぐ……ゆんやぁぁぁぁぁぁ! もぉやだぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅぅぅ!!!」 「わかってんのか……よぉ! このゲスが!!」 そして、泣き喚くれいむを力いっぱい地面に叩きつけると、それっきりれいむは音を立てなくなった。 俺は餡子で汚れた右手をごしごしと手近な壁に擦り付けると、いそいそとその場を後にした。 おわり あとがき お題が終わらないのでつい 凄い手抜きだ byゆっくりのあねきィィ!の人? おまけ(むしろ本編?) ずりずりと、ずりずりと。まるで芋虫のようにゆっくりと。しかし必死に、れいむは這っていた。 身じろぎする度に全身に激痛が走る。風が頬を撫でるたびに激痛が走る。身体を虫が這う度に激痛が走る。 朝露が肌を濡らす度に激痛が走る。木の枝が肌に掠る度に激痛が走る。 狂ってしまいそうな痛みの中で、それでもれいむははっきりと意識を保ちながらずりずりと這っていた。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 頭の中は、それでいっぱいだった。 れいむが男に暴行を受けた場所からここまで、たったの20メートル。そして、ここかられいむが向かおうと している場所までは、およそ30メートルほど。 普段なら鼻歌など歌いながらすぐに行ける道と距離でも、多量の餡子を失い、身体の所々が裂けてしまった 今のれいむにとっては苛烈な決死行であった。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 れいむは足を速める。無理をすれば死期が近付くのは、頭ではわからなくとも感覚でわかっているはずだ。 死にたくない。 死にたくない。 でも早くしなきゃ。 早く行かなきゃ。 それでもやめない。やめられない。 れいむはゆっくりしたゆっくりだから。 しんぐるまざーのれいむはかわいそう。だから、ゆっくりしなきゃいけないんだから。 れいむは必死に這い続ける。 死にたくない。 そんな事より早くしなきゃ。 もっともっと急がなきゃ。 早く行かなきゃ。 既に半分以上の餡子を失い、意識は朦朧としている。にも関わらず、れいむの足は絶えず動き続けていた。 ただ一つの思いの為に。 ただ一つの信念の為に。 ただ一つのゆっくりの為に。 その、執念にも似た思いが通じたのかは定かではないが。 れいむはとうとう、目指していたその場所に辿りついた。 そこは、気の根っこの間にある大きな穴だった。丁度、成体のゆっくりよりも一回りだけ大きいくらいの。 「れ む ね」 傷だらけのれいむの小さく掠れた声が響く。本来ならば伝わらないであろうほどの、微かな声。しかし、 洞窟の中で反響した為か、その声はちゃんと、その穴の主へと届ける事が出来た。 ぼよん、ぼよんと何かが跳ねてくる音が響く。 そして、その主はどすんと音を立て、傷だらけのれいむの前に姿を現した。 「やっとかえってきたのこのうすのろれいむ! さっさとあまあまをだしてね! だしたらうすのろは ゆっくりしないでしんでね!」 「よこちぇー!」 「きゅじゅー!」 そこにいたのは。 れいむが言っていた、『かわいそうなしんぐるまざー』のれいむと、その子供達だった。 そう、れいむは全て、このしんぐるまざーのれいむ達の為にとあまあまを探しに出かけていたのだ。自分が ゆっくりするためではなく、可哀想なれいむをゆっくりさせてあげるために。必死に。必死で。れいむが 欲しがっているあまあまを人間に貰いにいっていたのだ。 しんぐるまざーれいむは、傷だらけのれいむの姿を見つけると、仰天し、涙を流して声を上げた。 「どぼじであまあまもっでないのぉぉぉ?! にんげんがらうばっでごいっでいっだでしょぉぉぉぉ?! ぞんなごどもでぎないのぉぉ?! まざがでいぶをゆっぐりざぜるぎがないのぉぉぉごのぐずぅぅぅ!!」 しかし、驚き、そして涙を流した理由は、傷だらけのれいむが、あまあまを持っていない事に対しての 物であった。 「ちが れ むは がんば ごめ ゆっ ちりょう ね」 掠れた声でしんぐるまざーれいむへの謝罪と、自己の治療を頼む傷だらけのれいむ。 しかし、しんぐるまざーれいむ達は。 「うるさいよ! やくたたずはゆっくりしんでね! しんだあとでおわびのあまあまをもってきてね!」 「ちにぇ! ちにぇ!」 「きょんにゃきゅじゅはころちちゃえびゃいいりょ!」 傷だらけのれいむへの怒りを露にして、殺してしまえ、とまで言った。 「ゆっ! それもそうだね! れいむのおちびちゃんはかしこいね! きっとおっきくなったらこんな ぐずとはちがうりっぱなれいむにそだつよ!」 「「ゆっへん! しょれほどでみょにゃいよ!」」 「じゃあさっさところすね! おちびちゃん! おかーさんのかっこいいところゆっくりみててね!」 「「ゆっきゅちみりゅよ!」」 傷だらけのれいむは、堂々と自分を殺す算段をつけている親子の会話を聞いていても全く動じなかった。 先刻から、身体の痛みも、聞こえる音も。どこか遠くの出来事のように感じてくるようになっていたから だった。 痛みが消えたわけじゃない。言葉が聞こえないわけじゃない。 ただ、それを理解する機能が失われかけているのだ。 ゆっせーのっ! ゆっ!! ゆゆ~ん! おきゃーしゃんのじゃんぴゅしゅっごくゆっきゅちちちぇるにぇ~! 仲の良さそうな親子の声が耳に滑り込んでくる。 しんぐるまざーれいむのあんよを、たった一つになってしまった目で見上げながら、れいむは思う。 あぁ、ゆっくりしてもらえなかった。 たよりなくてごめんなさい。 もっとゆっくりさせてあげたかったのに。 れいむは、しんぐるまざーだから。 かわいそうだから。 やさしくしてあげないとだめなんだよ。 かわいそうなれいむ。 やくにたてなくてごめんね。 れいむはもうしんじゃうけど。 れいむはきっと。 かわいいこどもたちといっしょに。 わらいあって、それでげんきに。 ゆっくりしていっ ぐしゃり、と。 しんぐるまざーれいむの足が、傷だらけのれいむの頭を踏み潰し、完全にれいむは息絶えた。 しんぐるまざーれいむは、子供達の前で誇らしげに胸を張る。が、次の瞬間。 「ゆ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! でいぶのぶりでぃなあんよがいだいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」 顔色を変えて飛びあがり、家の中をごろごろと転がりまわった。 原因は、傷だらけのれいむの歯である。人間の打撃は、れいむの目と表皮をずたずたにし、上側の歯の ほとんどをへし折ったが、下顎にある歯は一本たりとも欠けさせることはなかったのだ。ゲスゆっくりを 嫌っていた人間の執念が、しんぐるまざーれいむに牙を剥いたのだろうか。 しんぐるまざーれいむは子供達にあんよを舐めさせながら涙を流した。 れいむは思う。 それもこれも、全部役立たずのれいむのせいだ! 役立たずに見つけさせたこの家も、ゆっくりした自分には狭すぎてちっとも相応しくない! そして、れいむは未だにずきずきと痛むあんよでふらふらと立ち上がりながら、大声で叫んだ。 「ごんなゆっぐりでぎないどごろにいられないよ! でいぶはもっどゆっぐりでぎるおうぢをざがずよ!」 その言葉が死亡フラグだからか。 あるいは、因果応報という奴か。 常識的に考えれば、こんな所で大声を上げたせいかもしれない。 「「「「「「「「「「「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「「「うー! ゆっくりしね!!!!」」」」」」」」」」 突然、巣に大量のれいぱーありすとふらんが雪崩込んできたのだ。 れいむ一家はこの後、意気投合し結託したありすとふらんに犯され、子供を産まされ、子供を食べられ。 ちっともゆっくりできない数ヶ月を送った後に、朽ち果てて死んだ。 あとがき2 ゲスじゃないゆっくりにしんぐるまざー云々言わせてみる事を思いついたのでやってみた ゲスの始末は本題じゃないのであえて適当に このSSに感想をつける
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「れいむはしんぐるまざーなんだよ、かわいそうなんだよ!」 「「かわいちょうなんらよ!」」 その、しんぐるまざーのれいむと子供のれいむ二匹の三匹の親子がやってきたのは、夏 の終わり頃であった。 「あら、それはたいへんね」 「かわいそうだよー、わかるよー」 「みょん、すこしごはんをわけてやるみょん!」 「それならまりさも!」 「れいむもわけてあげるよ!」 群れのゆっくりたちがれいむ親子に同情して食べ物を少しずつ分けてやった。少しずつ でも集めると相当の量になった。成体一匹、子供二匹が食べるには十分過ぎる量だ。 「ゆん! ここの群れはみんなゆっくりしているね!」 「ゆわーい、ゆっくち!」 「むーちゃむーちゃちようにぇ!」 れいむ親子は当然のことながら大喜びだ。 こんな調子でタカリゆん生を歩んできたれいむたちであるが、こうまであっさりと食べ 物をくれたのは初めてであった。 「ものわかりのいいゆっくりばかりだよ、ここに住むことにするよ!」 「ゆっくち!」 「よかっちゃにぇ、おきゃあしゃん!」 れいむたちは巣を見つけて定住した。見つけたというか、空いている巣を提供されたの だ。まことにいたれりつくせりで怠惰なれいむ親子が喜ばぬはずがない。 「かわいそうなれいむたちにごはんをちょうだいね!」 「「かわいちょうにゃんだよ!」」 毎日毎日そう言って食べ物を要求するれいむたちに、群れのゆっくりの大半は少しずつ 狩りの成果を分けてやる。 当然のことながら、れいむたちは増長した。くれと言えばくれるのでわざわざそうとは 口にせぬが、食べ物をくれるゆっくりたちを自分たちの奴隷と思うようになっていた。 「むきゅ、れいむ」 そんな時、食って寝てゆっくりしているれいむたちのおうちへ、ぱちゅりーがやってき た。 「ゆ? なに、ぱちゅりーもかわいそうなれいむにごはんをくれるの?」 「むきゅ、ちがうわ」 「ゆっ! ゆっくりしてないぱちゅりーだね! だったらさっさときえてね、このクズ!」 「きえちぇね!」 「クジュ! クジュ!」 「れいむ、あなた少しは自分で狩りをしなさい。別に動けないわけじゃないんでしょ」 ぱちゅりーの言う通り、れいむは狩りをやろうとすればできないわけではない。ろくに やったことがないため経験が無いだけで体は動くのだから、例えば群れの狩りが得意なも のに教えてもらったりすれば、できるはずだ。 「ゆぷぷ! なにいってるの。れいむはかわいそうなしんぐるまざーだからどれいたちが ごはんをくれるんだよ。だから狩りなんかするひつよーがないんだよ」 「ぱちゅりーのくせにあたまよくにゃいにぇ!」 「りきゃりできにゃいの? ゆぷぷ」 「それに、みんなれいむたちにごはんをくれてゆっくりしてるよ? だれも困ってないよ? ゆっくりりかいしてね!」 れいむの言う通りであった。 れいむたちに食べ物をくれてやるゆっくりたちは、皆とてもゆっくりしていた。 「かわいそうなれいむたちにごはんをあげるなんてとかいはね!」 「かわいそうなれいむを助けてあげたみょん!」 「いいことしたんだねー、わかるよー!」 「ゆっゆっ! まりさたちはとってもやさしくてゆっくりしているね!」 といった具合である。 「それはまだ食べ物がいくらでもとれるからよ、そのうち」 「うるさいよ! ごはんをくれないならさっさと消えてね!」 れいむは、ぱちゅりーの説教がましい言葉に苛立って、体当たりをかました。 「むきゅ!」 ぱちゅりーが巣穴から外に飛び出していく。 「ゆん」 もう一発ぐらいかましてやろうとれいむが後を追っておうちから出ると―― 「ゆっへっへ」 一匹のゆっくりまりさがいた。 「ぱちゅりーはまりさがつれてかえるから、れいむもおうちに帰るんだぜ」 ニヤニヤと笑いながら言った。 「ゆぅぅぅ」 れいむは、探るようにまりさを見て、ぷいと不機嫌そうに身を翻しておうちに入ってい った。 「ゆふふふ、力の差ぐらいはわかるみたいなんだぜ」 まりさはそう呟くと、倒れているぱちゅりーの元へと跳ねた。 「ぱちゅりー、やっぱりあいつも駄目なんだぜ」 「むきゅぅ……でも……」 「そもそも、駄目じゃない奴ならあんなになってないんだぜ」 これまで、流れゆっくりは幾度もこの群れにやってきた。中には、あのれいむのように しんぐるまざーだったり、体に傷を負っているものもいた。 しかし、ここは食料が豊富にとれるゆっくりぷれいすであるから、よほどの障害があっ たりしない限り、頑張ればある程度は食べ物を集められる。 そこで、まず自分で頑張ってそれでも足りない場合はみんなで援助するのもいいだろう とまりさも思う。 でも、あのれいむたちのように、かわいそうだからと当然のように要求しこれが満たさ れると今度はそれが当たり前のように思って自分では全く動かなくなるような連中は放っ ておけばいい。 「みんなやさしいから、もうすこしの間は、ゆっくりさせてもらえるんだぜ。あんな奴ら にはそれでもしあわせーすぎるぐらいなんだぜ」 「……むきゅぅ……」 冬が近付いてきていた。 ゆっくりたちは、越冬の支度に入ろうとしていた。実り多きゆっくりぷれいすなので、 よほどのヘマをしなければ、なんとか群れの全員が越冬できるだけの食料は集められる。 不慮の事故などが無い限り、みんな揃って越冬できるはずだ。 「ゆっぎいいいい! どれいども、なにじでるのぉぉぉぉぉ!」 「ゆぴゃあああん、おにゃかすいちゃよぉ!」 「にゃんできょうはむーちゃむーちゃできにゃいのぉ!?」 れいむ親子は、いつもならば群れのゆっくりたちが食べ物を届けに来る時間になっても 誰もやってこないので喚き散らしていた。 「むきゅ、れいむ……」 そこへ、いつか偉そうに説教するのでせいっさいっしてやったぱちゅりーが現れた。 「ぱちゅりー! はやくごはんをちょうだいね! たくさんでいいよ! はやくしないと せいっさいっするよ!」 「はやくよこちぇ!」 「クジュはゆっくちちてにゃいではやくちろ!」 「れいむ……これがさいごのチャンスよ」 ぱちゅりーは、半ば諦観を顔に表しつつ言った。 「今からなら、一生懸命集めれば越冬のためのごはんを集められるわ。一生懸命狩りをし ていれば、もしも足りなくてもみんなが恵んでくれるわ」 「はあああああ!? なにいってるのぉ、この馬鹿ぱちゅりー! れいむたちはかわいそ うだから、狩りなんかしないでもどれいが食べ物を持ってくるんだよ!」 「まったく、おばかなぱちゅりーだにぇ!」 「かわいちょうなれいみゅたちはかりにゃんかしにゃくていいんらよ!」 「……で、きょうのごはんはどうしたの? まだ誰も持ってこないの?」 ぱちゅりーが冷静に言い返す。 「ゆっ、ぐ……」 れいむはさすがに返事に詰まる。正に、ごはんを誰も持ってこないのを訝しく思い、憤 っていたところだったのだ。 「きょうはむのーなどれいがグズグズしてるだけだよ! もうすぐ来るよ!」 「そうらよ! ゆっくちちね!」 「ゆっくちちてにゃいぱちゅりーだにぇ!」 「れいむ……」 「うるさいよ! またせいっさいっされたいようだね!」 「ゆわーい! おきゃあしゃん、やっちゃえええ!」 「せいっしゃいすりゅよ、ぷきゅぅぅぅぅ!」 れいむがぱちゅりーに体当たりをしようとしたその時、 「ゆへっ、とりこみちゅう失礼なんだぜ」 まりさが、ひょいとれいむのおうちの中を覗き込んだ。 また、あの時のまりさだ。 「ぱちゅりー、もう何言っても無駄だからかえるんだぜ」 「むきゅぅ……」 「そうだよ! さっさとかえってね!」 れいむは、まりさの登場にやや気後れしつつも怒鳴りつけた。 「ゆへへっ、それじゃ失礼するんだぜ、ほら、ぱちゅりー」 「むきゅぅ……」 ぱちゅりーはまりさに帽子を引っ張られて不承不承れいむのおうちから出ていった。 「まったく! 馬鹿でグズでクズでむのーでゆっくりしてないぱちゅりーだったね! し ねばいいのに!」 「ゆゆん! ゆっくちちてにゃいにぇ!」 「ゆっくちちね! ばかぱちゅりー!」 それらの罵倒を聞きながら、ぱちゅりーは脱力していた。 「ぱちゅりーは二度も忠告したんだぜ。もう十分なんだぜ」 まりさは、真剣な顔をしていた。 「ぱちゅりー、馬鹿は馬鹿なんだぜ、言ってもわからない奴はわからないんだぜ。もっと 割り切ったほうがいいんだぜ」 その顔のままそう続けた。 「ゆへっ」 しかし、次の瞬間には、まりさはまたニヤニヤ笑いを口の端に浮かべた軽薄そうな表情 に戻った。 「さて、そろそろみんなのおたのしみっ、なんだぜ。じゃましちゃ悪いんだぜ」 「……むきゅぅ……」 「ゆがああああああ、どれいどもぉぉぉぉぉ! おそすぎるよぉぉぉぉ!」 「おにゃかすいちゃよ! ゆっくちできにゃいよ!」 「のろまなどりぇいをせいっしゃいすりゅよ!」 「ゆん、そうだね、おちびちゃん。ちょっとどれいに甘い顔をしすぎたよ!」 いつまで経っても食べ物が届けられないのに臨界点を超えたれいむ親子は、おうちから 出てきた。 どれいのケツを叩いてやるつもりだ。 「ゆん! ゆん! ゆん!」 群れのゆっくりがよく集まる広場に行ってみると、そこではほとんどの群れゆっくりた ちがゆっくりしていた。 「なにじでるのぉぉぉぉぉぉ!」 れいむの大声に、群れゆっくりたちは驚いて、昼寝をしていたものは目を覚ます。 のろまでむのーなどれいどもが必死に狩りをしているのかと思っていたが、想像以上の 惨状だ。こうまで怠けているとは思わなかった。 「はやぐ狩りに行っでごぉぉぉい!」 きょとんとしていたゆっくりたちは、しばし顔を見合わせたりしていたが、やがてれい むの一番近くにいたまりさがぽよんと跳ねてから言った。 「きょうの狩りならもう行ってきたよ」 「ゆん」 「そうだよね」 他のものもそれに同調する。 「だったらなんでれいむのところにごはんを持ってこないのぉぉぉぉ!」 「そうらよ! きゃわいいれいみゅはおにゃかすいてたんらよ!」 「はやくよこちぇ! このクジュぅぅぅ!」 怒りで叫ぶれいむ親子を見ていたゆっくりたちが、にやっ、と笑った。 「きょうからえっとうのためのごはんを集めてるから、そんなよゆうはないよ」 「ゆっ、そうだよね」 「えっとうのごはんはいくらあってもたりないよー、わかってねー」 「ゆ゛っ!」 れいむは、今までと一転して冷淡な対応に一瞬戸惑うも、迷わず伝家の宝刀を振るった。 「れいむはしんぐるまざーなんだよ! かわいそうなんだよ!」 「「かわいちょうにゃんだよ!」」 子れいむ二匹も後に和したが、それによって心を動かされたように見えるゆっくりは一 匹もいなかった。 「ゆん、だからいままでまりさたちはごはんをあげたでしょ、まりさたちはやさしいから ね!」 「とってもとかいはね、ありすたち!」 「ちぇんたちはいいことしたんだよー、ゆっくりできたよー」 「だ、か、ら! いままでみたいにごはんをよこぜええええ! れいむたちはかわいそう なんだよ! だからごはんをあげないといけないんだよぉぉぉぉ! なんでわがらないの、 このどれいどもぉぉぉぉ!」 れいむがどんなに激昂しても、皆、どこ吹く風といった表情だ。 「どれい? まりさたちはそんなものになった覚えはないよ。れいむたちがかわいそうだ と思ったから、よゆうのあるうちはごはんを恵んであげたんだよ。でも、もうえっとうの 準備をするから、そんなよゆうはないんだよ」 「どれいによゆうなんていらないよ! いいがらはやぐよごぜええええ!」 「だからどれいじゃないよ、ゆっくりりかいしてね」 まりさがいかにもうんざりだという感じの顔でため息混じりに言うと、他のゆっくりた ちはおかしそうに笑った。 「わ! わらうな゛ぁぁぁぁ! れいむだちは、かわいそうなんだよ!」 「ねえ、かわいそうなれいむ」 と、ありすが言った。 「みんながあげたごはん、まさか全部食べちゃったの? 少し残しておかなかったの? 自分で狩りはしなかったの? そうしていたら、いまごろえっとうできるぐらいの量は残 ってたんじゃないの?」 「ゆ……な、なんで残しておかないといげないの! かわいそうなれいむたちには、毎日 どれいがごはんを持ってくるんだよ!」 「れいむったら、本当にかわいそうねえ」 「ゆ! そうだよ、だからごはんを……」 「もう、かわいそうなぐらい頭が悪いわねえ。せっかくやさしいありすたちがかわいそう なれいむでも少し頑張ればえっとうできるように恵んであげたのに」 たっぷりと哀れみをこめたありすの言葉に、またもや群れのゆっくりたちはおかしそう に笑う。 「ゆぐ! でも、だって、えっとうのために残しておけなんて、誰も、言ってなかったよ ……」 「そんなの、言われないとわからないとはわからないよー」 ちぇんが言い、そしてまたみんなの笑い声。 「ゆぎ! ゆぎぎぎぎ!」 「お、おきゃあしゃん……」 「ゆ、ゆっくちぃ……」 とにかく、このどれいどもが自分たちを心底馬鹿にしているというのだけは嫌というほ どわかった。 かわいいおちびちゃんたちも、嫌な雰囲気に萎縮してゆっくりできなくなっている。 「うるざぁぁぁい! このどれいどもぉぉぉ! きよくただしいれいむがせいっさいっし てやるよぉぉぉぉ!」 「みょん!」 飛び上がったれいむだったが、着地した瞬間に突進してきたみょんに先の尖った棒で頬 を刺されてしまった。 「ゆぎゃあああ、いだぃぃぃぃぃぃぃ!」 「まったくゆっくりしてないれいむだみょん」 「ゆん! まったくだね!」 「このいなかもの!」 激痛に転げ回るれいむを見てみなが嘲笑う。 「ゆぴゃあああああん!」 「おきゃあしゃんをいじめりゅなあ! ぷきゅぅぅぅぅ!」 子供たちは一匹は泣き叫ぶばかりだったが、もう一匹は勇敢にも膨らんで威嚇した。 しかし、その精一杯の威嚇すらも、もはや嘲笑の対象であった。 「ゆっぐっ、ゆっ、ゆっ」 なんとか立ち直ったれいむだったが、自分たちを取り巻く軽蔑をあらわにしたゆっくり たちに恐れをなして、二度とどれいとかせいっさいっとかを口にしようとはしなかった。 すごすごと退散していくれいむ親子に、さらなる嘲罵が浴びせられた。 「ゆぐっ、ゆひぃぃぃぃ」 「ゆぴゃあああん」 「ゆぴぃ、ゆっくちできにゃぃぃぃ」 我が身の哀れさを感じつつ、れいむ親子はおうちへと引き上げていった。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ……ゆぅ」 翌日、ようやくれいむは自ら狩りをしようと表に出た。 しかし、狩りをろくにしたことがないれいむは不味い草ぐらいしか手に入れることがで きなかった。 「ゆぅ……」 しょんぼりとしながらおうちに向かって跳ねていくと、声が聞こえる。 「ゆっ!」 見れば、少し距離をとったところで群れのゆっくりたちがれいむを見ながら、さも楽し そうにひーそひーそと話していた。 「ゆっ!? ゆゆゆ?」 ひーそひーそといっても、それほど小さい声ではない。しっかりとれいむには聞こえる ような声だ。 「かわいそうにね、いままで怠けていたからろくに狩りもできないんだよ」 「かわいそうねえ、あんなにみんながやさしくあげたのに、それを無駄にして」 「かわいそうだね、あそこまで頭がわるいとね」 「かわいそうにねえ、あんな親を持ったおちびちゃんたちはさ」 ひーそひーそ、ひーそひーそ。 かわいそうに、かわいそうに。 「ゆっぎ! 言うな……」 れいむは、無形の刃に切り裂かれて精神を著しく傷つけられた。 「かわいそうって、言うなぁぁぁぁぁ!」 かわいそうだからと食べ物を貰えていた頃は、自ら盛んに称していたというのに、今や れいむはそう言われることを嫌って激昂した。 「ゆあーん! なんか文句あるのぉぉぉぉ!」 「このいなかもの、せいっさいっされたいの!?」 「ゆぷぷ、れいむ自分で言ってたよね。れいむたちはかわいそうなんだよぉぉぉ、って」 だが、すぐに複数のゆっくりたちに凄まれ揶揄され、おうちに逃げ帰る。 ぽよんぽよんと跳ねていたれいむは、おうちに帰ってくると、そこで信じられぬものを 見た。 「ゆぴゃあああああん、やめちぇぇぇ!」 「たちゅけ、ちぇ、おきゃあ、しゃん」 二匹の子れいむが、三匹の子まりさたちにいたぶられているではないか! 「な、なにじでるのぉぉぉぉぉ! やべろぉぉぉぉ!」 「みょん!」 止めに入ろうとしたれいむだが、みょんに一撃貰ってふっ飛ばされてしまう。 「ゆぐ……ゆぅぅぅ」 痛みに呻くれいむの視界では、依然としてわが子がなぶられている。 「ど、どぼじで……どぼじでごんなごとずるのぉぉぉ」 「れいむのおちびちゃんがいけないんだよ」 側にいたまりさが言った。 「ち、ちぎゃぅぅぅぅ、ちぎゃうよぉぉぉ」 「れいみゅたち、わりゅいことしちぇにゃいよぉぉぉ!」 「まったく、かわいそうな子たちだみょん。わかっていないみたいだみょん」 「かわいそうな親にそだてられたからしょうがないわね。まったくとかいはじゃないわ」 「ゆふん、おちびちゃんたち、そのへんでかんべんしてあげてね。その子たちもかわいそ うなんだよ」 「「「ゆん、ゆっくちきゃんべんしてあげりゅよ!」」」 子れいむたちをいたぶっていた子まりさたちが、そう言って離れた。後には、お飾りも 髪の毛も肌もボロボロになった子れいむたちが残された。 「お、おちびぢゃん……ぺーろ、ぺーろ」 「ゆっく……ち、でき、にゃい……」 「ゆぴぃ……ゆぴぃぃぃぃ」 ことの真相はこうであった。 空腹に耐えかねた子れいむたちが、狩りから帰ってこないれいむを待ち切れずにおうち から出て、ちょうど狩りから帰ってきたゆっくりたちに食べ物をねだったのだ。 しかし、なんだかんだで実際に肉体的に痛めつけられたわけではない子れいむたちは、 子ゆっくりのゆっくりできないことはさっさと忘れる性質も手伝って、いまいち自分たち の置かれている立場が理解できていなかった。 下手に出て懇願するのならともかく、居丈高に要求したのだ。 大人のまりさは無視したが、親に同行して狩りを習っていた三匹の子まりさたちはニヤ ニヤしながら近付いていき、自分たちの狩りの成果を見せ付けた。 子ゆっくりが自分で狩れるものなどたかが知れているが、それでも狩りなどできない子 れいむたちに対して優越感を味わうには十分であった。 「かわいちょうなれいみゅたちは、きゃりもできにゃいんだにぇ!」 「おお、かわいちょうかわいちょう」 「ゆぷぷ、おにゃかすいちぇるの? だったらじぶんでとってくりぇば?」 屈辱に震える子れいむたちに、親まりさの言葉が追い撃ちをかけた。 「狩りの練習もしないで怠けてばかりいるとこいつらみたいになるんだよ。ゆっくりりか いしてね!」 「「「ゆっくちりきゃいちたよ!!!」」」 「……ゆっくち……ちねえ!」 「せいっしゃっ、すりゅよ!」 子れいむたちはとうとう激発して、飛び掛った。 しかし、食っちゃ寝していた子れいむ二匹と、親に狩りを習って表を跳ね回っている子 まりさたちでは力の差は歴然であった。数も、子まりさたちは三匹いて多い。 あっという間に叩き伏せられた。 「ゆぷぷ、よわすぎりゅよ!」 「かわいちょうににぇ、れいみゅたちよわいよわいらよ!」 「まりしゃたちはもっちょがんばろうにぇ、こんなふうになりちゃくないもんにぇ!」 そこからは一方的なリンチであった。 他の群れのゆっくりたちも狩りから帰ってきたが、誰も止めるものはいなかった。 「ほら、なまけているとああなるんだよ」 「ゆっくちりかいしちゃよ」 それどころか、先ほどの親まりさのように、そうやって子供たちの躾に利用しているも のが多かった。 冬が来た。 「またはるにね!」 「はるになったらゆっくりしようね!」 「ゆっくりさようなら!」 春の再会を約して、皆それぞれの巣穴の入り口をふさいでいく。 「おねがいじまず、ごはんをめぐ」 「ゆっくりじゃましないでね!」 「ゆべ!」 冷たい地面にれいむは倒れた。 立ち直った時には、おうちの入り口は完全に塞がれていた。 「おねがいじまず、ごはんをめぐんでぐださい。このままじゃえっどうでぎまぜん!」 「ゆぴぃぃぃ、ゆぴぃぃぃぃ」 「ゆっくり食いはあっちにいってね!」 他の巣に近付こうとするれいむと子れいむだが、容赦ない拒絶にあう。 二匹の子れいむのうち一匹は、既に永遠にゆっくりしていた。 そして、その死体をれいむともう一匹の子れいむは喰らった。 厳しい環境下を生きる野生ゆっくりにとって同属食いは必ずしもタブーではない。しか し、真面目に狩りをすればそんなことをせずとも生きられる環境で生きてきたこの群れの ゆっくりたちは、子供を、姉妹を食ったれいむ親子を完全に敵視し、ただでさえ酷かった 待遇はさらに過酷なものになっていた。近付くだけで暴力を振るわれることは当たり前に なっていた。 そして、二言目には言われるのだ。 みんながあんなにやさしくしてやったのに、それを無駄にして! と――。 「ぱちゅりー、いりぐちをふさぐんだぜ」 「むきゅ……」 れいむ親子を見ていたぱちゅりーが巣の奥に入ると、まりさが入り口を塞ぎ始める。 「しょうがないんだぜ、ぱちゅりーはちゃんと忠告したんだぜ」 まりさは作業をしながら言った。 食料が豊富なこのゆっくりぷれいすには、多くの流れゆっくりが訪れる。 中には、あのれいむたちのように、自分たちはかわいそうなのだから食べ物をよこせと 言うものもいる。 食料がよくとれる頃には、群れのゆっくりたちは快くこれに応じて食べ物を恵んでやる。 そして、自分たちはなんてやさしいんだろう、なんてよいことをしたんだろうと思って ゆっくりするのである。 だが、それも越冬準備が始まるまでだ。それが始まると、食べ物を恵むのはぴたっと止 んで、働かないで食っちゃ寝生活に慣れて鈍りきったさまを見て、せっかくみんながよく してやったのに何をやっているのかと蔑むのだ。 皆、別に意識してやっているわけではない。 ただ、余裕があるうちはかわいそうな弱者に恵みを与えてゆっくりし、余裕がなくなっ てきたらかわいそうな弱者を蔑んでゆっくりしているだけである。 ぱちゅりーは、こういった連中をなんとか説得しようとするのだが、成功したことがな い。 まりさが言っていたように、そもそもそこで説得されるようなものなら恵んでもらえる のをいいことにそこまで堕落したりしない。 一度成功したことは次も成功する。失敗してもそれは何かの間違いだ、と思い込むのは ゆっくりでは珍しくない。 みんなに恵まれて何度も何度も成功体験を重ねたゆっくりは、容易にその方針の間違い に気付けない。気付いた時には、もう手遅れになっている。 そして、増長してどれいだのクズだのと罵れば、群れのゆっくりたちからの援助は絶対 に受けられなくなる。 行き着く先は、アレだ。 思い切ってここを離れない限り、それまでなんとか採れていた不味い草すら無くなった 越冬開始前の時点で完全に詰んでしまうのだ。 れいむ親子は、一欠けらの食べ物も恵んでもらえぬまま、悄然としておうちに入って行 った。そのおうちに蓄えられているのは不味い草が僅かといったところだろう。 「ぱちゅりー、言って分からない奴は分からないし、手遅れになってから分かったって遅 いんだぜ」 「むきゅぅ……」 まりさは、後ろめたそうにしているぱちゅりーを心配そうに見やる。 ぱちゅりーとまりさは子供こそいないものの、番同然の付き合いである。その上でまり さは、ああいったゆっくりに忠告するぐらいならともかく、食べ物の援助等をしたら絶縁 だと告げてある。 本当に絶縁する気は無いのだが、そう言っておけば、大好きなぱちゅりーがああいう馬 鹿どもに深く関わって不幸になることが防げると思ってのことだった。 「さあ、ぱちゅりー、むーしゃむーしゃするんだぜ」 「むきゅ、そうね」 春――。 れいむ親子のおうちには、大きなリボンが一つと、ひからびた子れいむの死体があった。 終わり 餡子んぺに出そうと思ってたけど条件満たせなかったネタ。 書いたのはふらんが大好きだけど全然活躍させられてないのるまあき。 anko429 ゆっくりほいくえん anko490 つむりとおねえさん anko545 ドスハンター anko580 やさしいまち anko614 恐怖! ゆっくり怪人 anko810 おちびちゃん用のドア anko1266 のるま anko1328 しょうりしゃなのじぇ anko1347 外の世界でデビュー anko1370 飼いドス anko1415 えーき裁き anko1478 身の程知らず anko1512 やけぶとりっ
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【花】 春。 あたたかな風が新たな生命の芽吹きを促す頃、れいむとまりさは恋に落ちた。 ――――― 群れ一番の美ゆっくりと謳われるれいむ。群れを統率する長の長男であるまりさ。二匹は、お互いの両親の勧めで見合いをした。 互いに見知らぬ仲ではなかったが、面と向かって話をしたことはない。 見合いの席には、淡い桃色の花びらで着飾ったれいむと、勇壮な毛皮の衣をまとったまりさが緊張の面持ちで現れた。 面をあげ、数瞬、互いに見つめ合う。 虹色に輝くときめきの花が、二匹の心に咲き誇った。夫婦の絆を手繰り込み、愛すべき者を見つけたのだった。 ――――― れいむは良い妻となり、まりさは良き夫となった。困難も苦悩も悲哀も、二匹の仲を割くに足りるものではなかった。睦み合い、やがてれいむは腹に児を宿した。 まりさは以前にも増して食料の調達に精を出し、れいむは生まれ来る我が子に教育するべき事柄を考えていた。まりさは、気の早いことだと苦笑しながら、溢れる幸福感に身をふるわせていた。 ――――― 夏が過ぎ、鳴り虫の合唱が秋の涼しげな風に乗って運ばれゆく頃、れいむは児を出産した。れいむによく似た美しく愛らしい赤れいむと、まりさに似た強悍で目つきの鋭い赤まりさ。両親は、大切な我が子の未来に幸運の光あれよと願った。 ――――― 花は、その盛りを永遠に保つことはできぬ。いわんや、か弱き小動物の終わらざる日常をば、長らえることも叶わず。 ――――― 積み上げるは難く、崩し去るは易く。歳老いたれいむを棄てたまりさは流れ者のありすと懇ろになり、二匹の子は食料の分配に因るいがみ合いの末に、群れを引き込んだ争いを起こし、その渦中にあって死んだ。 まりさはありすに家財を奪われ、前途に闇を見たれいむは川に身を投げた。 ――――― 冬が来た。 もはや寄り添うべき温もりはなく、庇護を求める手合いもいない。 思い返してみれば、なんと儚い花の夢。散るが悲しく美しくあらば、いっそ川面に波紋を立てん。 清くささやかに流れる水鏡の向こうに、いつか見た虹色の大輪が咲き誇る。 桃色に包まれた伴侶の、淋しげな笑顔が見えた気がした。 完
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直接的な虐待はありません 愛でられたゆっくりについてはまったく知りません ドスまりさが出ます ちょろっとあにゃる ここは加工所にあるゆっくり養殖場、ここでは名の通りゆっくりを養殖しそれを実験等に使っている。 ここで生まれてくるゆっくりは四種、れいむ、まりさ、ぱちゅにありす。どれも植物型にんっしんで生まれてくる 食用にされる事は無く、ドスのいる群れゆっくりとしてなるべく野生に近く育てられる。 必要に応じ赤ゆっくり、子ゆっくり、時には成体ゆっくりを繁殖飼育させていた。 そんなある日いつものようにゆっくり収穫作業をしていた加工所の職員は思った。 (ここで育つゆっくりや野性ゆっくりはほとんどがゆっくり出来ずに死んでいく。愛でられた飼いゆっくりは人の手でゆっくりさせられたものだし、野生に近い状態で最後の最後までゆっくりさせ続けたらどうなるのか?) 思い立ったが吉日、職員は上司に掛け合いまだ実の状態の赤れいむをそれはそれはゆっくりと育てる事にした。 「ゆっきゅりちていってね!」 「「ゆー!!この赤ちゃんれいむはとってもきれいおかざりをしてるよ!」」 この赤れいむは生まれた瞬間からとてもゆっくりしていた。 ここでは固体識別のため、実の状態からそれぞれの飾りにタグが付けられている。職員がれいむのそれを特別綺麗なものにしたので 大好きな母れいむと父まりさがこの特別なれいむの誕生を一番喜んでくれたのだ。 れいむは五匹姉妹の真ん中、姉も妹もとっても褒めてくれた。 赤れいむはとてもゆっくりしていた。 おかーさんは初めてのご飯のときれいむにだけ口移しでくれた。 おとーさんはれいむに一番長くすーりすーりしてくれた。 皆と一緒にドスにあいさつしに行ったときドスと補佐役のぱちゅりーは群れで生まれた赤ちゃんの中で一番気に入ってくれた。 この赤れいむが子れいむになるときにはとてもゆっくり出来る友達が出来た。 狩りが得意なまりさ、れいむもびっくりするほど綺麗で上品なありす、おとーさんおかーさんより物知りなぱちゅりー。 いっつも四匹で遊んでいた、時々群れの広場から離れて冒険したときは必ずあまあまさんを見つけた。 れいむに嫉妬しいじめるゆっくりは何故か次の日になると居なくなっていた。 れいむが成体近くになる頃、まりさとぱちゅは次のドスと補佐役と言われるほどになった。 友達がそれ程になるのはれいむにとっても嬉しかったし自慢になったけれど とっても綺麗で皆に優しいありすにけっこんしましょうと言われた事がれいむにとって一番だった。 おとーさんおかーさんが居なくなった時、群れの子供や赤ちゃんが突然消えたとき、ドスやぱちゅが引退すると言ったとき とても悲しかったけど、その都度ありすやドスとなったまりさ、たくさんの言葉で慰めてくれたぱちゅやありすと育てた子供達がいたおかげで立ち直れた。 それかられいむはとてもとてもゆっくりと過ごした・・・ そしてれいむにとって最後の日 その日は群れ総出でれいむの最後を見守った。 「ゆぅ…れいむはもうたくさんゆっくりできたよ…みんなのおかげだよ」 「でいぶうううう!ありずをおいてかないでええええ!!」 「おがーざあああんゆっぐりじでよおおおおお!!!」 「むきゅ…ありすにこどもたち、かなしんじゃだめ。れいむをみて、いまとってもゆっくりしているわ、これはゆー往生といってとくべつなものなのよ」 「ゆー往生?ぱちゅ!ドスにそれをおしえてね!」 「とてもゆっくりしたゆっくりだけがたどりつけるさいごのことよ、れいむもみんなもゆっくりできるの」 「でもれいむはゆっくりしてないよ!れいむ!ゆっくりして!」 「ゆ…こどもたち…ゆっくりしたおとなになってね。まりさにぱちゅ、これからも皆をゆっくりさせてね」 「ありす、れいむひとりになるのがこわいよ・・・さみしい・・・よ」 「「「「ゆううううう!!!れいむうううううう!!!!」」」 「ご、こどもだぢ!おがあざんにずーりずーりじまじょうね!!」 「おがあざん!ずーりずーり!だいずぎだよおおおお!!!」 ゆー往生って何だ、それより何も起きないのかとモニタ越しに見ていた職員が思ったその瞬間 「ありずはでいぶとずっといっいっいっんほおおおおおお!」 突然発情したかと思えばありすの目、口、あにゃるからカスタードがゆっくり目で見て致死量だと分かるほど漏れ出す。 「ゆ、ゆぎゃああああおどおざああああゆっぐ、ぐるじ・・・ゆっゆっあぶっゆ゙っ!」 ありすの異変に駆け寄ろうとした子供達はなんと爆裂してしまった 「ぱちゅ!こ、これはいったいどういうこと!?ありすとこどもたちががしんじゃったよ!」 「むきゅうううううん!わからないわ!なんでごっ!!ぶっ・・・ぶぎゅう!」 続いてぱちゅりーも、そしてまわりで見ていたゆっくりたちも 「ゆー!どうなっでぐっぐぅ・・・」 「おかーしゃんどうちたの?ゆっ!ゆううううう・・・」 「ゆうう・・・こわいのけどなんだかすっきっきっきゆ゙っゆ゙っ」 「ま、まりさはとにかくにげゆばっっ!!」 「ごんなのどがいばじゃなびっ!!」 「むきゅっきゅっゆっゆっゆっ」 「みっみんなゆっくりしてね!ぱちゅはおへんじしてね!ドスどうすればいいかわかんないよ!」 どういうことだ、ありすの死を皮切りにほとんどのゆっくりが死んでいく。 ゆー往生、今わの際にゆっくりが餡の底からゆっくり出来たと思って初めて起こる・・・だっけか。 うーん、恐らくそれを見てゆっくりしたら中身を漏らして昇天、ゆっくりできなかったら爆発。 多少取り乱したが常々冷静にと言われていたドスと無関心だったゆっくりだけ免れたのか こいつらはとことんゆっくりできない運命にあるんだな・・・ 地獄を見た後さっさと帰ってしまったゆっくり、オロオロしているドス、男の心配を他所に れいむはとてもとてもゆっくりしていた。
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直接的な虐待はありません 愛でられたゆっくりについてはまったく知りません ドスまりさが出ます ちょろっとあにゃる ここは加工所にあるゆっくり養殖場、ここでは名の通りゆっくりを養殖しそれを実験等に使っている。 ここで生まれてくるゆっくりは四種、れいむ、まりさ、ぱちゅにありす。どれも植物型にんっしんで生まれてくる 食用にされる事は無く、ドスのいる群れゆっくりとしてなるべく野生に近く育てられる。 必要に応じ赤ゆっくり、子ゆっくり、時には成体ゆっくりを繁殖飼育させていた。 そんなある日いつものようにゆっくり収穫作業をしていた加工所の職員は思った。 (ここで育つゆっくりや野性ゆっくりはほとんどがゆっくり出来ずに死んでいく。愛でられた飼いゆっくりは人の手でゆっくりさせられたものだし、野生に近い状態で最後の最後までゆっくりさせ続けたらどうなるのか?) 思い立ったが吉日、職員は上司に掛け合いまだ実の状態の赤れいむをそれはそれはゆっくりと育てる事にした。 「ゆっきゅりちていってね!」 「「ゆー!!この赤ちゃんれいむはとってもきれいおかざりをしてるよ!」」 この赤れいむは生まれた瞬間からとてもゆっくりしていた。 ここでは固体識別のため、実の状態からそれぞれの飾りにタグが付けられている。職員がれいむのそれを特別綺麗なものにしたので 大好きな母れいむと父まりさがこの特別なれいむの誕生を一番喜んでくれたのだ。 れいむは五匹姉妹の真ん中、姉も妹もとっても褒めてくれた。 赤れいむはとてもゆっくりしていた。 おかーさんは初めてのご飯のときれいむにだけ口移しでくれた。 おとーさんはれいむに一番長くすーりすーりしてくれた。 皆と一緒にドスにあいさつしに行ったときドスと補佐役のぱちゅりーは群れで生まれた赤ちゃんの中で一番気に入ってくれた。 この赤れいむが子れいむになるときにはとてもゆっくり出来る友達が出来た。 狩りが得意なまりさ、れいむもびっくりするほど綺麗で上品なありす、おとーさんおかーさんより物知りなぱちゅりー。 いっつも四匹で遊んでいた、時々群れの広場から離れて冒険したときは必ずあまあまさんを見つけた。 れいむに嫉妬しいじめるゆっくりは何故か次の日になると居なくなっていた。 れいむが成体近くになる頃、まりさとぱちゅは次のドスと補佐役と言われるほどになった。 友達がそれ程になるのはれいむにとっても嬉しかったし自慢になったけれど とっても綺麗で皆に優しいありすにけっこんしましょうと言われた事がれいむにとって一番だった。 おとーさんおかーさんが居なくなった時、群れの子供や赤ちゃんが突然消えたとき、ドスやぱちゅが引退すると言ったとき とても悲しかったけど、その都度ありすやドスとなったまりさ、たくさんの言葉で慰めてくれたぱちゅやありすと育てた子供達がいたおかげで立ち直れた。 それかられいむはとてもとてもゆっくりと過ごした・・・ そしてれいむにとって最後の日 その日は群れ総出でれいむの最後を見守った。 「ゆぅ…れいむはもうたくさんゆっくりできたよ…みんなのおかげだよ」 「でいぶうううう!ありずをおいてかないでええええ!!」 「おがーざあああんゆっぐりじでよおおおおお!!!」 「むきゅ…ありすにこどもたち、かなしんじゃだめ。れいむをみて、いまとってもゆっくりしているわ、これはゆー往生といってとくべつなものなのよ」 「ゆー往生?ぱちゅ!ドスにそれをおしえてね!」 「とてもゆっくりしたゆっくりだけがたどりつけるさいごのことよ、れいむもみんなもゆっくりできるの」 「でもれいむはゆっくりしてないよ!れいむ!ゆっくりして!」 「ゆ…こどもたち…ゆっくりしたおとなになってね。まりさにぱちゅ、これからも皆をゆっくりさせてね」 「ありす、れいむひとりになるのがこわいよ・・・さみしい・・・よ」 「「「「ゆううううう!!!れいむうううううう!!!!」」」 「ご、こどもだぢ!おがあざんにずーりずーりじまじょうね!!」 「おがあざん!ずーりずーり!だいずぎだよおおおお!!!」 ゆー往生って何だ、それより何も起きないのかとモニタ越しに見ていた職員が思ったその瞬間 「ありずはでいぶとずっといっいっいっんほおおおおおお!」 突然発情したかと思えばありすの目、口、あにゃるからカスタードがゆっくり目で見て致死量だと分かるほど漏れ出す。 「ゆ、ゆぎゃああああおどおざああああゆっぐ、ぐるじ・・・ゆっゆっあぶっゆ゙っ!」 ありすの異変に駆け寄ろうとした子供達はなんと爆裂してしまった 「ぱちゅ!こ、これはいったいどういうこと!?ありすとこどもたちががしんじゃったよ!」 「むきゅうううううん!わからないわ!なんでごっ!!ぶっ・・・ぶぎゅう!」 続いてぱちゅりーも、そしてまわりで見ていたゆっくりたちも 「ゆー!どうなっでぐっぐぅ・・・」 「おかーしゃんどうちたの?ゆっ!ゆううううう・・・」 「ゆうう・・・こわいのけどなんだかすっきっきっきゆ゙っゆ゙っ」 「ま、まりさはとにかくにげゆばっっ!!」 「ごんなのどがいばじゃなびっ!!」 「むきゅっきゅっゆっゆっゆっ」 「みっみんなゆっくりしてね!ぱちゅはおへんじしてね!ドスどうすればいいかわかんないよ!」 どういうことだ、ありすの死を皮切りにほとんどのゆっくりが死んでいく。 ゆー往生、今わの際にゆっくりが餡の底からゆっくり出来たと思って初めて起こる・・・だっけか。 うーん、恐らくそれを見てゆっくりしたら中身を漏らして昇天、ゆっくりできなかったら爆発。 多少取り乱したが常々冷静にと言われていたドスと無関心だったゆっくりだけ免れたのか こいつらはとことんゆっくりできない運命にあるんだな・・・ 地獄を見た後さっさと帰ってしまったゆっくり、オロオロしているドス、男の心配を他所に れいむはとてもとてもゆっくりしていた。
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『ゆっくり公民 ~カースト制~(後編)』 30KB いじめ 差別・格差 群れ 希少種 自然界 人間なし 3作目 後編 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編)の続きになります 冬の間、大きく拡張したかなことさなえのおうちには、二匹以外のゆっくりの姿があった、らんとけーねである、かなこが頼み込んで一緒に冬篭りをしてもらう事にしたのだ。 これは次の春に向けて、かなこの群れを作るためにらんとけーねの知恵が必要だったからである、すでに成ゆっくりとなったさなえも話に加わり、四匹は群れの運営について話し合った。 かなこはこれまで群れに参加したことが無かったが、群れにいた経験のあるらんと「れきし」の知識のをもつけーねはそれをフォローできるゆん材であった。 最初に決めたのは、群れの階級制度である。かなこのはゆっくりの階級を3つに分けることを考えた。 頂点に希少種、次にこれまでに実証された能力の高い種であるまりさ種とみょん種、その下にそれ以外の種を置くことを決めた。それぞれの階級を「きしょうしゅ」・「せんし」・「へいみん」と呼び、上の階級のゆっくりが下のかいきゅうのゆっくりを指導し、下の階級のゆっくりは上の階級のゆっくりに服従する、これを掟とすることを決めた。 この話を聞いたけーねの発言により、この制度は「かーすと」と呼ばれることになる。 次に決めたのは群れの基本となる仕事についてである、これまでかなこのグループが成功させていたように、群れの中でゆっくりを種ごとのグループに分けて仕事を割り振り、群れの備蓄にする以外は公平に分ける、この方法を継続することになる。 その後、らんから普通の群れが掟としている、窃盗や暴力、殺ゆんなどに対する罰則が提案されるが、これについてはかなこに異存は無かった。 防衛についても現在のまりさ種とみょん種による訓練と見回りを継続し、再びの侵攻、最悪の場合ドスを含むものに対しては群れ全体を動員して迎撃に当ることにする。 最大の問題はゆん口問題だった、初期の襲撃ににより犠牲が少し出ているとはいえ、もともとこの辺りの森には居なかった数のゆっくりが集まっているのである、周囲に勢力を広げようとしても一方――山の見える方角――は襲撃者の群れが有ると思われる方角だし、反対側にもゆっくりの足でいける場所には限界がある。 このまま春になれば、群れのゆっくり達にも新しい番が生まれるし、春まで我慢していたすっきりーを行う番も出てくるだろう。 そうなれば待っているのは食糧不足からなる群れの崩壊である。 ならば、すっきりーを制限しようかと考えるかなこを止めたのはらんだった、 「すっきりーを制限すれば、群れのゆっくりの不満が爆発してしまわないか?」 「唯でさえ"かーすと"という一部の種によってはゆっくりできないものを認めさせるんだ」 これにはけーねも同意する、 「下のかーすとのゆっくり達もそうだが、まりさとみょんにも子供の居ない番が多い、すっきりー制限は危険だろう」 「あの、むれのみなさんに、おちびちゃんのかずをいっぴきにするようにおねがいするのはどうでしょうか……?」 冬の間の話し合いでも、結局この問題に対する対策は決まらず、さなえの提案くらいしか出てくるものは無かった。 これの解決法が出るには春まで待たなければならなかった。 そして多くのゆっくりが待ちわびた春、おうちの作った結界を取り外して外に出たかなこは、まだ少し肌寒い春の森を見回す。 周りの木からも声が聞こえ、越冬に成功したゆっくり達が外に出ようとしているようだ。 「おかあさま、いったいなにをしてらっしゃるんですか?」 背後からのさなえには笑みを返し、かなこは再び森を見回した、これからここに自分の群れを作るのだ、そう、とてもゆっくりしたゆっくりプレイスにしよう、かなこの決意は硬かった。 らんやけーね、さなえとも手分けをして、群れの中を見回るかなこ、今回の越冬の成功率は7割と言ったところで、決して大成功とはいえない、しかし野生においては決して低くない数字である。 なにより、かなこのグループにいたまりさ種とみょん種とその番はほとんど越冬を成功させていることから、さらにかなこの威光は高まった。 慌しく周囲のゆっくりを集めると、かなこは春の最初の狩りを行った、越冬で弱っているゆっくりも居る以上は、出来るだけ早く食料を集める必要があったのだ。 数日後、冬篭りの消耗から回復したゆっくり達が森の広場に集まり、その中心にはかなこの姿があった。 隣にらんとさなえを並ばせたかなこは、集まった群れのゆっくり達に宣言する。 「みんな、ゆっくりしていってね、これからこの群れの掟を発表するよ!」 そうして発表される「ゆっくり・かーすと」制度、ある程度は予想していたがその発表にどよめく群。 「まりささまのじつりょくなら、こんなものなのぜ!」 「みょんのぶゆうが、みとめられたみょん!」 納得し、ある意味当然という顔をしたゆっくり達、 「むきゅ、まりさたちのしたになるのね……」 「ありすは、とかいはよ、もっとうえにぐうしてしかるべきだわ!」 「わからないよー、ちぇんだってがんばっているんだよ!」 「なにいってるの、れいむは、とってもゆっくりしているんだよ!」 不満を漏らすゆっくり達、しかしそんなゆっくり達も、みょんとまりさという群れの二大勢力と希少種を従えたかなこには従わざるを得ない。 また比較的に頭の良いゆっくり達は、冬篭り前のかなこのグループの狩りの成果と、その施しを覚えていたため、一応は納得した。 続いて群れの掟が発表されてゆく、その中には盗みの禁止や殺ゆの禁忌といったゆっくり達にとってある意味当たり前のものが多かったが。 普段のゆっくり生活に大きく関わるのは、群れの「しごと」であった、この群れのゆっくりはその種により群れから仕事を割り振られることになり、そこから報酬を貰う事になる。 しかし、多くの群れで決められるすっきりーに関する掟がかなこの口から語られる事は無かった、そう、結局かなこ達はこの問題に関する解決を見出せなかったのだ。 群れのゆっくり達は希少種の下、種族ごとに集まり、群れの仕事をしていくようになった、大体の割り振りは以下の通りである。 希少種:群れの首脳部、各グループの指揮 みょん種:群れの警備、狩りの補助 まりさ種:狩りの主体 ぱちゅりー種:備蓄の管理(子供の世話予定) ありす種:群れのおうちの整備、どうぐの製作 ちぇん種:周囲の探索、遠隔地での狩り れいむ種:全体の補助 この方法は狩りや作業の効率化という形で群れに利益をもたらした、既にかなこと周囲のゆっくり達が行っていた狩での成果だけでなく、おうちの製作や道具の製作を複数のゆっくりで行うことで、製作スピードは数倍にも跳ね上がった。 森の一区画のにおうちをたくさん作り、そこに群れの備蓄を一括して集める計画も立てられ、ありす種とれいむ種による工事が行われだした。 しかし、とうとうかなこ達の恐れていた事が起きてしまう、すっきりーをするゆっくりが現れだしたのだ。 春になり番を作るゆっくりは多かった、しかし群れ全体で行動することと仕事により、多くのゆっくりはすぐに子供を作ろうとはしなかった。 これには様々な仕事に同行したさなえの説得も多いに効果があった、通常種の中では比較的頭の良いもの達もゆん口問題に気がついており、ある程度の自制もされていたのだ。 すっきりーをして、にんっしんしたゆっくりは、ほとんどがれいむ種だった、れいむ達はゆん口問題などには気がつかずただ「おちびちゃんはゆっくりできる」という信念の下に番を急かし、すっきりーに持ち込んだのだ。 もちろんその中には、にんっしんすれば辛い仕事――工事の穴掘りから逃れられると考えたれいむも少なからずいた。 この事態に頭を抱える希少種達、やはりすっきりー制限をするべきだったか、そう悩むかなこに救いの手(ゆっくりに手は無いのだが)を差し伸べたのは意外なゆっくりだった。 この一件の少し前、群れが成立して少し立った頃、群れに不思議な訪問者があった。 それは一匹のゆっくりちぇんで、この群れのほかのちぇんとは比べ物にならないほどの美ゆっくりであり、ピンとたった耳、スラリと伸びた尻尾の毛並みは美しく、汚れの見えない緑のお帽子にはキラキラと輝く飾りが付いていた。 なんと、このちぇんは群れに入れて欲しいと言ってきたのだ、かなこがこの群れのやり方とカーストについて説明してもその意思は変わらなかった、かなこは襲撃者の群れのスパイを疑ったが、らんの強烈な後押しもあり群れに加入したこのちぇんは普段の仕事においてなかなかの優秀さを示すことになった。 さらにこのキラキラちぇんは、らんからプロポーズを受けることになり、それを受けてらんの番となった。 こうしてかなこやさなえ、けーねといった、群れの首脳部の集まりにも顔を出すようになったのだ。 かなこは、らんがキラキラちぇんと番になったと聞いたときは驚いたが、話をしてみれ驚かされる事になる、キラキラちぇんの見識は、らんやけーねといった希少種にも劣らないものだったからだ、この群れに来る前の事は話そうとはしないが、様々な知識と体験談は貴重であり、かなこの相談にも乗るようになる。 そんなキラキラちぇんに、かなこはすっきりー問題について相談を持ちかけてみた。 かなこにしてみれば、何かきっかけにでもなればとした相談で、大きな収穫を得ることになる。 「にゃぁ、かーすとの差をもっと分かりやすくするべきだと思うよー」 「すっきりーはゆっくりの本能だよー、禁止したってやるゆっくりはやっちゃうよー」 「だから、すっきりーを自分で抑えないとゆっくりできなくすればいいんだよー」 キラキラちぇんの提案は以下のようなものだった。 子ゆの増加による食料問題は、この群れが全体ではなく家族ごとの越冬スタイルであるため、自己責任になる。 現在の仕事の報酬の分配はほぼ平等だが、これにカーストで差をつけるべきである。 カーストの上下の徹底、上のゆっくりの命令には逆らわせないこと。 ゆっくりの番は基本的に異種である、この場合番の間でカーストが異なることが出るので、これは高いほうに合わせる。 その代わり、番になるけっこんっの際に番のカーストの差によって群れに税を納めさせる。 この提案はかなこにとっても良いものだった、狩りの成果の分配は平等にしてきてしまったが元々、種族による能力差に合わせるつもりでもあったし。 番の間でのカースト差による問題などは意表を付かれた。 そして、最後にキラキラちぇんが語ったすっきりーの制限法にかなこは目から鱗が落ちる思いだった、さらにその方法なら群れに優れた種が増えることにもつながる。 この掟はすぐに群れへ通達され、ゆっくりの間に波紋を広げることになる。 掟を提案したキラキラちぇんについては、らんとの間のカースト差から莫大な税がかかる事になったが。 番のらんがすさまじい勢いで狩りを行い、なんと数日で税を納めることとなった。 この掟に反発するゆっくりも多く居たが、自分のカーストを上げられると言われると、番を急かして税を納めた。 もっとも割を食う形となったのはゆっくりの中に最も多いと言われるまりさとれいむの番だが、狩りの報酬がカーストを含む能力別になった事により、なんとか税を納めることに成功した。 しかし、群れのゆっくりは知らなかったのだ、この掟に含まれる毒に、その毒が姿を現すの次の春になる…… それからしばらくして、群れに変わったまりさが訪れた、大きなスィーに乗り、後ろに袋を積んだまりさは、自分を「ちょうたつや」のまりさと名乗った、話を聞いてみると食料と引き換えに様々な物を用意してくれるゆっくりだそうである、 「そうか行商人のような物か、つまり商人だな」 こんなけーねの言葉によりこのまりさは商人まりさと呼ばれる事になる、かなこに許されたこの商人まりさは群れに出入りするようになるが、なかなか便利であった。 どの様に手に入れているのか、ゆっくりにとっては薬にもなる貴重なあまあまを持っていたし、ゆっくりの傷を消すことが出来る粉は、非常に貴重なものであると群れのえーりんが太鼓判を押した。 群れのゆっくり達も、少しながらあまあまが入る事を喜んだし、この商人まりさは情報も買っていたのだ、群れの周囲のこと、どんなゆっくりが住んでいるか、他に知っている群れ、それらの情報と引き換えに、惜しげもなく食料を提供するこのまりさは群れに歓迎されることになる。 かなこも話をしてみると、かなこの思想にも一応の興味を示したし、他の場所で希少種と会ったらこの群れの事を伝えると約束してくれた、また群れの希少種の事についても聞かれた。 そんな風に順調なかなこの群れであったが、問題が起きたのは春の終わりの事だった、以前のすっきりー事件の時ににんっしんして出産を済ませたれいむ達が一斉に不満を並べだしたのだ。 梅雨が近いこの時期は群れは梅雨を越えるために狩りに力を注いでおり、ゆっくり達にも各自で備蓄を作っておくように注意がされていた。 これによって食料が不足しだしたのが子持ちの番であった、出産したゆっくりはれいむが多く番が群れにけっこんっ税を払っていたこと、赤ゆっくりは群れが預かってくれるといっても、子ゆっくりと離れたがらないれいむ達が仕事に出なかったこと、が重なった上に、多くのゆっくりが梅雨用の備蓄をを作り出した事から周囲の援助を受けられなくなった事が原因だった。 れいむは不満だった、こんなにゆっくりしている、れいむのごはんが足りないのだ。 「おかしいよ、れいむこんなにゆっくりしているのに!」 何故だ、群れの狩ではあんなにごはんが採れているのに、それならとってもゆっくりしたれいむと、そのおちびちゃんにはたっぷりのごはんが用意されるのが常識ではないか。 番のまりさも不甲斐ない、こんなにゆっくりしたれいむがすっきりーしてやって、こんなにゆっくりしたおちびちゃんを産んでやったのにあれ以来、時々非難するような目を向けてくるのだ。 そもそも、この群れがおかしいのだ、かーすとだかなんだか知らないが、ゆっくりしているゆっくりが偉いなら、このれいむ様と同じれいむが一番ゆっくりしているに決まっているではないか、それをあんな狩しか出来ないようなまりさと、棒っきれを振り回すしか能の無いみょんが偉いなどと、頭の餡子が腐っているに決まってる。長やその周りのゆっくりも変なのが多い、なんてゆっくりしていない群れなんだ。 眠っている赤ゆっくり達に目を向ける、そうだおちびちゃんの為になんとかしないと…… 「だって、れいむはおかぁさんだからね!」 そんなれいむのおうちに一匹のゆっくりが入り込んだ。 そうして、溜まった不満から群れのれいむ達によるクーデターが起こった、集まって不満を叫んでいたれいむ達は群れの食料庫に向かうと、その場に居たぱちゅりーを追い払い、食料庫の結界を破ると中の食料をむさぼりだした。 「ふは、うっめ、まれまじうっめ!」 「これは、いだいなれいむさまがたべてあげるよ、かんしゃしてね!」 「さぁ、おちびちゃんおかあさんがとってきたごはんだよ、ゆっくりたべようね!」 「「「「「「むーちゃむーちゃ、おいしいんだじぇ!」」」」」」 「ぽんぽんいっぱいになったら、うんうんするよー、すっきりー」 狩に行っていたかなこと、それに従うみょん、まりさ達が急報を受け戻った時には食料庫はあらされ、うんうんがまきちらされ、なすび型になったれいむ達が眠っているという信じられない光景が広がっていた。 「あんた達、これはいったい何のまねだい!」 寝転んでいるれいむの一匹に詰問する。 「ゆ、おさ、なんなのれいむはゆっくりしていただけだよ!」 「れいむのゆっくりをじゃまするなんて、おさはゆっくりしてないね!」 寝ぼけていたところを叩き起こされ、不機嫌そうに答えるれいむ。 他のれいむ達ものろのろと起き出すと、そのれいむに同調して文句を言い出す。 「おさが、れいむをゆっくりさせてくれないから、じしゅてきにゆっくりしていたんだよ!」 「れいむは、もっともゆっくりしたゆっくりなんだよ、それがわかってるの!」 「ぷぷぷ、れいむのいだいさががわかったらあまあまもってきてね、すぐでいいよ!」 「「「「「「おかぁしゃん、きゃっこいー!」」」」」」 「おちびちゃん、まっててね、すぐにこのどれいにあまあまもってこさせるからね!」 無言でオンバシラを呼び出したかなこは、それを地面に叩きつける。 ドスンという大きな音が響き、周りのまりさやみょんも、一瞬すくみあがる。 「ゆゅ!!!」 この時、れいむ達は自分の目の前に居るものの力に気が付いた…… 「それで、この一件の首謀者はいったい誰なんだい?」 れいむの集団を睨み付けるかなこ、怯えだしたれいむ達のの視線が奥に居た一匹のれいむに集中する。 かなこの視線もそれを追い、睨まれたれいむがそれに気が付く。 「ゆ、なにをいってるの、みんな、いまこそかなこにれいむいだいさをおもいしらせるんだよ!」 「みょんやまりさなんてめじゃないよ、とつげきだよぉー!!!」 大半は凍った様に立ち尽くすが、扇動された一部のれいむが、かなこ達に向かって突撃する。 「ゆっくりしないでしね、ゆ、ゆびぃ!」 「ゆぎぃ、いたいいたいよ、やめてね!」 「ゆー、ゆびぃ、ゆ、ゆ、ゆ……」 そうしたれいむは、みょんの反撃を喰らう。 「なにをしてるんだぁ、みんなでいくんだよ、はやくしろ、れいむのめいれいをきけぇ!!!」 大声を上げる、首謀者れいむ、そこに無言で近づいたかなこのオンバシラがれいむを吹き飛ばした。 「ゆぶぅ……ゅゅゅゅ……」 吹き飛ばされた先で痙攣する首謀者れいむ、かなこはまりさとみょんに、反乱を起こしたれいむを捕らえて広場へ連行するように指示した。 それとは別に場所に、首謀者れいむを運ぶことも合わせて…… 広場に集められてれいむ達、いったい何が起きるのか、不安そうな顔をするもの、不満げな目を向けるものも、周囲を囲み木の枝を向けたまりさとみょんには何も出来ない。 一部、番のまりさやみょんに呼びかけるれいむも、番が周囲の白い目に沈黙すると黙ってしまう。 仕事に行っていた他のゆっくり達も、一体何が起きたのかと集まりだす、ちぇんを率いて群れの遠くまで行っていたらんが戻った時には、群れの広場には、群れの大半のゆっくりが集まっていた。 広場の中心に来たかなこによって発表される、れいむの反乱、最初は驚いていたゆっくり達も、れいむ達の所業――食料庫荒しが公になると、一斉に非難の声を上げる。 「まったく、れいむはゆっくりしていないのぜ、まりさたちのがんばりがむだになったのぜ!」 「むきゅ、ぱちぇはまえかられいむはいつかやるとおもっていたわ!」 「まったく、ぬすみぐいなんて、おちびちゃんじゃなんだから、まったくれいむはとかいはじゃないわ!」 かなこから発表された罰は、群れの掟によって窃盗の罪により、おしりぺんぺん2回であった。 罰の軽さに不満の声を上げるゆっくり達、続けて発表されたのは彼らの予想を超えたものだった。 「みんな、れいむ達は今回の様に、とてもゆっくりしていないわ、よってれいむ種のかーすとをひとつ下に、"へいみん"の下にする!」 れいむ種が群れの最下層になった瞬間だった、文句を言おうとしたれいむも周囲の白い視線に押しとどめられる、こうしてれいむ達の反乱は、彼らの地位を落とす結果となり終結した。 れいむ達のカーストは便宜上「ゆっくりしていない」と呼ばれるようになる…… かなこは、群れの外れ、首謀者れいむを捕らえた場所に一匹で赴いた。 あんよを傷つけられ転がされたれいむを、二匹のみょんが油断無く木の枝を突きつけた見張っている。 見張りのみょんに労いの言葉をかけて返すと、かなこはれいむに向き直った。 「ふぅ、反乱の首謀者がまさかお前だとはね……」 「ゆぎぃ、れいむはわるくないよ、ぜんぶかなこがわるいんだよ!」 このれいむ、なんとあのさなえの親れいむであった。 あの時、かなこに殴られたことを恨みに思ったれいむは、かなこのグループとは別の勢力の体の大きなまりさに取り入り番となる、まりさを長にして、かなこをせいっさいするよと暗い情念を燃やすれいむ。 しかし、そのまりさは襲撃の報を聞いて飛び出したものの、自分達より明らかに多い、襲撃者に怯えると、戦いを放棄して逃げてしまい、勢力のゆっくりからの信頼を失ってしまう、逆にこの襲撃を跳ね返したかなこのゆん望は上がるばかりであった。 れいむは歯噛みする思いだったが、そのまま冬に入ってしまう、蓄えた食糧とまりさで冬を越えたれいむは、春になりかなこの群れが立ち上がると、手出しが出来なくなってしまう、しかし群れのれいむ達に長への不満が出ていることに気が付き、そんなゆっくりをそそのかして反乱に持ち込んだのだ。 「私は間違っていたよ、こんな最低のゆっくりでも、あのさなえと餡子がつながっていると思って、生かしておいたんだからね……」 抑揚無く呟くかなこ、その横に振り上げられる二本のオンバシラ、 「かなこは、ゆっくりしね、ゆ、ゆぎぃ、ゆ、ゆるいしてね、ゆるしてね!」 振り下ろされる一本、 「ゆぎぃ、いじゃいぃぃぃ、やめてね、やめてね!」 そちらが振りあがり、もう一本が振り下ろされる、一撃で潰さず、左右から少しづつ叩かれてゆく、 「ゆびびび、ぎぎぎぎ、ゆひ、ゆひ、ゆひ、ゆろそて!」 喋れなくなったレれいむに、叩く二本のオンバシラの速度が上がる、何かを叩く音が止んだ時、その場に残っていたのは黒いミンチであった。 オンバシラが消えるとかなこは呟いた…… 「まったく、れいむはゆっくりしていない、他のゆっくりと一緒にしたのが間違いだったよ……」 そうすると反乱を起こしたれいむ達を裁くべく、群れの広場へと向かった。 長のおうち、もともとかなこのおうちだったこの木の洞は前の冬の拡張工事を経て、群れの中でも特に大きな物になっていた。 そのために希少種達、首脳部の仕事のための場所として利用される様になってしまう。 希少種だけでなく群れのゆっくりが絶えず出入りをするため、ゆっくりとしているおうちでは無くなってしまったのだが、それを謝るかなこにさなえは。 「だいじょうぶです、おかあさま、にぎやかになってとってもたのしいです、さなえはゆっくりしています!」 と答えたが、一人立ちに向けてか、こっそりおうちを作っているのもかなこは知っていた。 さなえの成長を喜ぶ反面、寂しい気分になるかなこ、その気持ちを振り払うかのように群れの運営に注力する。 そんなかなこの元には群れの様々な報告が集められていた。 食料の備蓄状態、おうちの整備、群れのゆん口。 あの反乱事件の後、なんとか梅雨を乗り越えた群れのゆっくり達、夏になり再び群れの備蓄は充実した。 このころ、れいむ種以外の番でもすっきりーをする番が出始めるが、長のかなこが越冬の自己責任を通達するとその数もある程度で収まった。 今、かなこの前に報告されているのは、群れの外に向かって探索を進めている、ちぇん達によって上げられている報告である。 何処そこにはよい狩場があった、あそこの木は高いところに実が成っている、群れに以外のゆっくりが住んでいる集落を見つけた、あそこには希少種が住んでいるようだ、大きな川さんを見つけたがわたれなかった、などという実用的な情報から。 こっちの森でれみりゃの影を見た、いや大きなれいむが居た、ゆっくりの何倍もある鳥さんが居たなどという不確かなものまで……多種多様である。 そんな中でも最大のものは、隣の群れのゆっくりと接触できたという点である、かなこの群れから見て山の見えるほうにある群れは、例の襲撃を行っていた群れである。 警戒していたちぇんだが、隣の群れのゆっくりも話が通じないわけでは無い、何度かの交流のあと、意を決して使者を送るかなこ、使者に決まったのは、あのキラキラちぇんであった、泣いてとめるらんを振りほどいて隣の群れに向かったキラキラちぇんの成果は莫大なものだった。 隣の群れは、やはりドスまりさに率いられた群れであるらしい、あのお飾りの無いゆっくり――となりの群れでは「どれい」と呼ばれる――を使っている群れで、そのためのゆっくり確保のために侵攻を繰り返して居たらしい。 ただしドスの方でもかなこの群れのように大きな群れと事を構える気は無いとかで、お互いに手出しをしないという協定を結べそうだとキラキラちぇんは語った。この頃、あの商人まりさもドスの群れへ向かったらしいが群れのゆっくりとトラブルを起こしたとかで、それに対する文句をかなこの群れで言っていた。 「まったく、この調達屋まりさに手を出すなんて、ゆっくりしていない群れなのぜ!」 この一件はドスの意向では無かったのか、この年の秋には、かなこの群れを通してドスの使者が商人まりさの元を訪れ謝罪し、商人まりさは再びドスの群れに向かうことになる。同じ時期に隣の群れとの相互に手出しをしないという協定も結ばれた。 かなこにとっても嬉しい出来事があった、ある日さなえがかなこの元を訪れると。 「あの、おかあさま、さなえは……その、すわこさまとずっといっしょにゆっくりすることにしました!」 と伝えた、群れの仕事で長のおうちを訪れる、すわこと恋仲になっていたようだ。 祝福するかなこや群れの希少種達、 「さなえ、良かったね、幸せになるんだよ……」 祝福するかなこの目に涙が光った。 様々問題を解決してきた、かなこの群れ冬への準備も成功し、この年の越冬の成功率は9割を超える事に事になる。 そしてその次の年の春、群れには大きな問題が持ち上がった。 それは「けっこんっ」問題であった、昨年キラキラちぇんが提案し、かなこが決めた群れのすっきりー対策がここで効いて来たのである。 この問題は、昨年生まれたおちびちゃん、子ゆっくりが成ゆっくりに成長し、一人立ちしようとした所で発覚した。 この群れの掟では「けっこんっ」つまり、番を作る時に群れへの税を納めなくてはならない、番の間でカーストの差が有れば大きくなるこの税は、まだ成体になったばかりのゆっくり達に集めるには辛いものだった。 この群れでは狩などは共同で行う「しごと」であり、そこから能力とカーストに応じて分配される形式である。 成ゆっくりに成ったばかりのゆっくりでも食事には困らないが、税として納めるだけの余剰は存在しない。 仕事の無い自由時間に集めるのは許されているがそれでも若いゆっくりが集められる量には限界がある。 このころ、カーストの上下が徹底されてきたことにより、この税は低カーストの方が納める事になる。 当然、税を払えない若いゆっくり達は親に助けを求めた、かわいいおちびちゃんのけっこんっのためにと、走り回るゆっくり達、一匹のまりさが番になるれいむに、 「ぜいだけじゃないのぜ、これでれいむも"せんし"ゆっくりになれるんだから、まりさにもおくりものをするのぜ!」 と贈り物を要求したことから、贈り物の慣習まで出来てしまう、さらに重圧のかかる親ゆっくり達。 こっそりと群れに隠れて番になったゆっくりが制裁されたことも手伝う、番を作れない子供達からの視線も痛い。 群れの中でも特にこれが重圧となったのは、昨年蓄えた食糧に余裕があると思い、すっきりーして子供を多く産んでしまった番と、考えずに子供を産み、カースト最下層となったれいむの番達であった。 こうなると、頭の良いゆっくり達は自分で対策をするようになる、産むおちびちゃんの数は減らす、植物性にんっしんの場合間引きを行い産むおちびちゃんの種を限定するなどである。 若いゆっくり達も親からこれを厳命される事になる。 とあるゆっくりのおうちでは、 「やめてね!まりさ、れいむにのおちびちゃんをころさないでね!」 「しかたがないのぜ、れいむ、"れいむ"のおちびちゃんがこんなにいたら、らいねんはっさんしてしまうのぜ!」 「むきゅ、しかたがないのね……」 「ごめんなさん、おちびちゃん、こんなのとかいはじゃないわね、でもおとうさんもおかあさんも、にひきがげんかいなの……」 もちろんゲスな親も存在する 「おかあさん、なんで、なんでれいむをおいだすの?」 「いたいよぅ、やめてね、やめてね!」 「うるさいよ、まりさのところにおよめにいくぜいっなんてはらえるわけないでしょ!」 「おちびちゃんたちは、ひとりだちしてじぶんであつめてね!」 「「そ、そんなにゃー!!!」」 「ゆ、それならいい方法があるのぜ、れいむのおちびちゃんを……ゴニョゴニョ」 「あまあまと、ゆー……わかったよそれでおねがいするよ」 こうして群れのゆっくり達は自分達で対策を考えるようになる、特にれいむ種の子ゆっくりや赤ゆっくりを持て余した番から別の群れで働いてもらうと言って、商人まりさがゆっくりを買い取る様になったのもこの頃からである。 成功したすっきりー対策とは別に、希少種達にも悲劇が起きた。 「ゆぅー!どうしてですか、どうしてなんですか、さなえのおちびちゃんも、すわこさまのおちびちゃんもきのうまでいたのに!?」 「あーうー!?」 「ちぇぇぇん、おかしいぞ、らんとちぇんのおちびちゃんが居なくなっちゃたぞ!?」 「うがぁぁぁ……もこうとけいねのおちびちゃんが!?」 「落ち着くんだもこう、もしかしたら迷子になっただけかもしれん、落ち着いて探すんだ、きっとこの帽子の中とか!?」 「てんこのおちびちゃん、でてきてねぇ!ほうちぷれいなんておちびちゃんにははやすぎるわぁ!!!」 群れがひと段落つき、すっきりーをする様になった、希少種の番、その間に生まれた赤ゆっくり達が突如として消えたのある。 ある日の夜、群れで一斉に事件は起きた、生まれた赤ゆっくりは自分ではほとんど動けないはずなのに、煙の様に消えたのである。 希少種達からの涙の訴えを聞いたかなこは、まりさ、みょん、ちぇんを総動員して、周囲を探索するがその痕跡すら見つからない。 ぱちゅりー達の行った群れの中の調査では、希少種以外にも、数例おちびちゃんの消えた事例が見つかるが、赤ゆっくりも犯ゆんの痕跡も何も見つからなかった。 そして、群れの中では「かみかくし」と呼ばれ恐れられる様になるこの事件は、希少種達に大きな悲しみを与えることとなった。 この頃、群れの中でこの事件は、ゆっくりできないれいむ達による逆恨みからの犯行という噂が流れる。 カーストが徹底されるようになり、最下位で不満にあえいでいたれいむ達はけっこんっ税の恨みからこの噂を否定しない。 「いいきみだね、きしょうしゅだからっていばっているからだよ、てんばつだね!」 れいむ達は昨年の反乱の恨みが、まだ群れのゆっくりの残っていることを知らなかったのだ…… 当初は冷静に噂を押しとどめようとしたかなこも、れいむ種の態度とさなえの涙により怒り心頭となる、 れいむ種のカーストは「どれい」となり、他の種によってれいむ達は迫害されるようになっていく。 梅雨を乗り越えた夏、すっきりーをした希少種の番に襲い掛かる悲劇、なんと神隠しが再び起こったのだ。 混乱に陥り、ゆっくりできなくなる希少種達、群れの首脳部、かなこはそんな番たちを慰めると、再度神隠しの調査に乗り出すことになる。 頭の冷えたかなこは、もはやれいむ達、低カーストのゆっくりによる犯行だとは思っていなかった。 夜におちびちゃんが消えていることを鑑みて、捕食種の犯行との推理から、群れの周囲で捕食種を捜索することになる。 赤ゆっくりを失ったショックから、気落ちしているらんに代わって、ちぇん達を率いるキラキラちぇんによって、群れの周囲数箇所にれみりゃの巣が発見され、かなことみょん達による昼間の襲撃で撃破されるものの、神隠しの証拠になるような証言、証拠が発見されることはなかった。 そんなある日、かなこは赤ゆを失い、悲しんでいるであろうさなえを慰めるため、さなえとすわこのおうちを訪ねた。 狩の途中で見つけた、美しい白い花と、商人まりさから購入した取っておきの、小さくて色とりどりのきれいなあまあまを携えておうちの中へ入ったかなこは、おうちの中にさなえの姿を見つけて恐る恐る声をかける。 「さ、さなえ、ゆっくりしているかい……?」 落ち込んでいると思ったさなえは、くるり、とかなこに向きかえると、朗らかに答えた。 「おかあさま、ゆっくりしていってください、さなえはゆっくりしていますよ!」 そのさなえの様子に驚きを隠せないかなこ、 「さなえ……その、おちびちゃんのことは…「おかあさま!さなえのおちびちゃんは、とてもゆっくりしたおちびちゃんでした。おちびちゃんは、そのしんこうにより、もりやさまのもとへむかったのです!」 「おちびちゃんたちは、きっといまもりやさまのもとでゆっくりしているにちがいありません!」 さなえの剣幕に驚くもの、さなえが元気を取り戻したならなにより、この時、かなこはそう思っていた。 この日からさなえは変わった、落ち込んで家に閉じこもっていたのが、群れの中を回ると赤ゆを失って悲しんでいるゆっくり達に「きしょうしゅのおちびちゃんは、とてもゆっくりしているので、もりやさまのもとでゆっくりしている!」と話して回った。 これによって立ち直ってくる希少種達、これは良い傾向だと考えるかなこの後押しを受け、さなえは群れの中に「しんっこう」を広めてゆく事になる。 夏の二度目の神隠しから立ち直った群れに、新たな問題が起きたのはその年の秋のことだった。 けっこんっ税によりすっきりーを、ある程度自重するようになった群れのゆっくり達、しかし、禁欲のストレスからか一部のありすがれいぱー化したのだ、もっともこの事件で被害は出なかった。 れいぱー化してまりさを襲うありす達、しかし狩りから戻ったまりさ達は集団であり、訓練されたゆっくりであった。 瞬く間に取り押さえられ、きょせいされてしまうありす達、ぺにぺにを失い大人しくなってしまったありすを被害ゆが居なかった事もあり、かなこが罰する事はなかった。 もう一つは、またもや起きたれいむ種の反乱である、群れのゆっくりから、どれい扱いされ不満をためたれいむ達が長のおうちを襲撃したのだ。 かなこは不在だったが、この事件はみょん達によりあっという間に鎮圧される、なんとこの時、みょん達を指揮したのはさなえであった、さなえの「しんっこう」はみょん達にも広まっていたのである。 「れいむさん、あなたたちどれいゆっくりは、とてもゆっくりしていません、しかし、もりやさまをしんこうし、きしょうしゅたちにつくすことによって、つぎのゆんせいではきしょうしゅとしてうまれることができるのです!」 さなえの取り成しによって、軽い罰でれいむ達は許される事になる。 この時、かなこは一つの危機感を抱いた、この二つの事件はどちらもまりさ種とみょん種で解決できてしまった。 何故か発生する神隠しにより、おちびちゃんが増えない希少種、このままでは希少種ではなく、まりさとみょんが群れの主導権を握ってしまうのでは無いだろうか。 何としても、神隠しを解決しなくては。 冬篭りの間も、次の春に向け、神隠し対策を考えるかなこ、一匹になってしまった長のおうちは、おふとんの中でも何故か寒かった。 新たなる春、ピリピリとしたかなこをよそに、新しい番が生まれ、すっきりーが行われる。 希少種の番に厳重な警備を敷くかなこ、そんな努力をあざ笑うかのように、三度起きる神隠し。 しかし、今回の神隠しは今までのものとは違った、どの番にもおちびちゃんが残ったのだ。 神隠しにより消えてしまったおちびちゃんを悲しんだ番も、残ったおちびちゃんに安堵する。 さなえのしんっこうが広まったことにより、消えたおちびちゃんは、とてもゆっくりしたところへ行ったのだと、だから残ったおちびちゃんもゆっくりさせてあげよう。希少種達に明るさが戻った瞬間だった。 さなえは番のすわことは春に入ってもしばらくはすっきりーをしなかった、群れのゆっくりに、しんっこうを広める事がさなえのゆっくりになっていたのだ。 今日も群れの希少種やその子供たちに向けてさなえはしんっこうを広めている、それを見守るかなこ、始めはさなえにもおちびちゃんを作るように勧めようかと思ったかなこだったが思い直した。 これでいい、これでいいのだ、さなえがゆっくりしていれば…… 後書き 勢いで続いた、CivⅣ労働制度ネタ第二段になります。 何故か思った以上に長くなってしまいました、読んで頂いた方にはお礼申し上げます。 また前作anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~に対して様々な感想、指摘、注意など有難うございました。 最後にドスの群れが生き残ることについて、ゲスの群れが制裁されなかった為にゆっくりできなかった方、申し訳ありません、今回も群れは存続してしまっています。 基本的に、群れの制度によりいじめられるゆっくりを書いているため、群れの崩壊までの描写が入らなくなっております。 どちらの群れにもいろいろな崩壊フラグは入れてあるのですが、最後に群れが崩壊してすっきりーという形にはなっていません。 一応、ネタ元のCivⅣ労働制度に沿って4部作を予定していますので、これらの群れについても取り上げることになると思います。 それと、この場を借りて謝らせていただきたいことがあります、anko2700 そして新記録も自分のかいた物になります。 これを読んですっきりしなかった方、イライラした方、申し訳ありません。 最後がオチていない、終わっているのか分かりづらいと指摘していただき、読み直してみると自分でもそう思いました。 基本的に感想である方が指摘した通り、パロディのためあそこで終わりとなっております。 いじめには見えない、タグが違うと指摘してくれた方、次回以降注意させて頂きます。 ※パロディを指摘した方、鋭いです、元ネタ的にはデブちぇんが盗みに入るべきでした。 最後にここまで読んでいただいた方、有難うございました、今後もご指摘やご感想お願い致します。
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ゲスゆ有 「ゆっくりしていってね!」 日課である朝の散歩中に突然足元から甲高い声が上ってきた。 なんだろうと思いながら……まぁ既に予想はついてるが……足元を見下ろしてみると、やはりというか なんというか、やたらとぷにぷにしてそうな生首がこっちを見上げてきていた。 「やっぱりゆっくりか」 「れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」 そう言ってれいむは誇らしげに胸を張る。 「はいはい、ゆっくりしていってねっと」 俺はいかにも気だるそうな感じを滲ませながらそう言って、せかせかとれいむの前を立ち去ろうとする。 が、そんな俺の様子を見てれいむは慌て、ゆっくりにあるまじきゆっくりしてなさを発揮して俺の前に 立ちはだかり、こう言った。 「まってね! にんげんさんはれいむにあまあまをおいていってね!」 それを聞いて俺はファッキューメーンと思った。いや別にゆっくりは男じゃないけれども、素直で可愛い ゆっくりが好きである俺をがっかりさせる言葉の一つだったからだ。 無視してやってもよかったのだが、ついてこられても迷惑だ。 なんとか口でやりこめて乗り切ろうと思い、下を向いてこう言った。 「何でさ」 「ゆ? わからないの?」 俺の言葉を受けたれいむは心底不思議そうに頭の上に疑問符を浮かべて小首を傾げる。 あまあま……要するに人間のお菓子の要求をする野良ゆっくりは多い。 ほぼ全てのゆっくりは甘い物が大好きである。加えてゆっくりは何事も自分の都合のいいように解釈する 悪癖があり、飼いゆっくりの飼い主がゆっくりにご飯をやっているのを見ただけで頭と性格の悪い野良などは 人間はゆっくりの奴隷であると勘違いするなどよくある話だ。 そうでなくても、『ゆっくりはゆっくりしていればみんなをゆっくりさせられる』という意味不明の信念を 持っていたりもするので、『ゆっくりした自分ならお菓子をくれるはずだ』という理屈から人間にあまあまを 要求する事などはざらにあるのだ。 俺を苛立たせない理由ならいい。ゆっくりにお菓子をやる物好きな爺さんがその辺にいて、人間はお菓子を くれるものだと思い込んでしまったとか、そういう俺にも納得しうる理由ならまぁいいや。俺はそう思い ながら、れいむの言葉を待った。 が、しかし。このれいむが語った『理由』は―― 「じゃあおしえてあげるね! れいむはしんぐるまざーなんだよ! すごくかわいそうなんだよ! だから やさしくしてあげないとだめなんだよ!」 俺の神経を卸し金で容赦なく削り取るような、吐き気を催すクソのようなものだった。 「お前のような奴がいるから戦争が無くならないんだ!(?)」 反射的に右の拳が足元のれいむに伸び、そのもち肌に突き刺さった。悲鳴を上げる暇すらなく、れいむは バウンドして空に舞い上がる。 おそらをとんでるみたい。シェイクされた頭でそんな事を考えているのであろうれいむの脳天を、追撃の ネリチャギが襲う。倒れている相手に頭の側から発動すればザコ即死がつく便利な技だ。 「ゆぶぇ?!」 衝撃で右の眼球を破裂させながら、れいむが叫び声を上げて地面に叩きつけられた。俺の足が頭の上に 乗っているので、今度はバウンドしない。 俺はそいつの頭から足をどけると、靴を脱いでそこにこびりついた餡子をそのへんの壁に擦り付けた。 餡子のついた靴でその辺を歩いたら虐待趣味の変態だと思われてしまうからだ。 と、そんな事をしている内に、既にずたぼろになっているれいむが起き上がる元気を取り戻していた。 もう相手にしないぞ、こんな薄汚いボロクズ。俺はそう心に決め、 「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ?! でいぶはじんぐるまざーなんだよぉ?! だがらゆっぐりざぜで あげないどだめなんだよぉぉぉぉぉ?!」 僅か二秒で決心した事実を闇に葬り去り、れいむの頭に鋭いチョップを浴びせた。 「ゆびぇ?! いだいぃぃぃぃぃ!! どぼじでごんなごぞずるのぉぉぉぉ?! がわいぞうなでいぶは ゆっぐりざぜであげなぎゃだめなんだよぉぉぉぉぉぉ?!」 悲鳴と共に、無くなった右目から涙と混じった液状の餡子がリズミカルに溢れ出す。 俺はそのれいむを掴みあげ、横っ面を思いっきり引っぱたいた。 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぎぇ?!」 「お前みたいな!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆがぁ?!」 「自分ばっかりゆっくりしたいとか!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぐぅ?!」 「そんな考えのゲスがいるから!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆげぇ?!」 「他の可愛いゆっくりまで!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆごぉ?!」 「害獣呼ばわりっ!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆぎゃぁ?!」 「されちまうんだ!」 左頬を打つ。頬からびしゃりと音が響く。 「ゆっぐ、えぐ……ゆんやぁぁぁぁぁぁ! もぉやだぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅぅぅ!!!」 「わかってんのか……よぉ! このゲスが!!」 そして、泣き喚くれいむを力いっぱい地面に叩きつけると、それっきりれいむは音を立てなくなった。 俺は餡子で汚れた右手をごしごしと手近な壁に擦り付けると、いそいそとその場を後にした。 おわり あとがき お題が終わらないのでつい 凄い手抜きだ byゆっくりのあねきィィ!の人 おまけ(むしろ本編?) ずりずりと、ずりずりと。まるで芋虫のようにゆっくりと。しかし必死に、れいむは這っていた。 身じろぎする度に全身に激痛が走る。風が頬を撫でるたびに激痛が走る。身体を虫が這う度に激痛が走る。 朝露が肌を濡らす度に激痛が走る。木の枝が肌に掠る度に激痛が走る。 狂ってしまいそうな痛みの中で、それでもれいむははっきりと意識を保ちながらずりずりと這っていた。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 頭の中は、それでいっぱいだった。 れいむが男に暴行を受けた場所からここまで、たったの20メートル。そして、ここかられいむが向かおうと している場所までは、およそ30メートルほど。 普段なら鼻歌など歌いながらすぐに行ける道と距離でも、多量の餡子を失い、身体の所々が裂けてしまった 今のれいむにとっては苛烈な決死行であった。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 れいむは足を速める。無理をすれば死期が近付くのは、頭ではわからなくとも感覚でわかっているはずだ。 死にたくない。 死にたくない。 でも早くしなきゃ。 早く行かなきゃ。 それでもやめない。やめられない。 れいむはゆっくりしたゆっくりだから。 しんぐるまざーのれいむはかわいそう。だから、ゆっくりしなきゃいけないんだから。 れいむは必死に這い続ける。 死にたくない。 そんな事より早くしなきゃ。 もっともっと急がなきゃ。 早く行かなきゃ。 既に半分以上の餡子を失い、意識は朦朧としている。にも関わらず、れいむの足は絶えず動き続けていた。 ただ一つの思いの為に。 ただ一つの信念の為に。 ただ一つのゆっくりの為に。 その、執念にも似た思いが通じたのかは定かではないが。 れいむはとうとう、目指していたその場所に辿りついた。 そこは、気の根っこの間にある大きな穴だった。丁度、成体のゆっくりよりも一回りだけ大きいくらいの。 「れ む ね」 傷だらけのれいむの小さく掠れた声が響く。本来ならば伝わらないであろうほどの、微かな声。しかし、 洞窟の中で反響した為か、その声はちゃんと、その穴の主へと届ける事が出来た。 ぼよん、ぼよんと何かが跳ねてくる音が響く。 そして、その主はどすんと音を立て、傷だらけのれいむの前に姿を現した。 「やっとかえってきたのこのうすのろれいむ! さっさとあまあまをだしてね! だしたらうすのろは ゆっくりしないでしんでね!」 「よこちぇー!」 「きゅじゅー!」 そこにいたのは。 れいむが言っていた、『かわいそうなしんぐるまざー』のれいむと、その子供達だった。 そう、れいむは全て、このしんぐるまざーのれいむ達の為にとあまあまを探しに出かけていたのだ。自分が ゆっくりするためではなく、可哀想なれいむをゆっくりさせてあげるために。必死に。必死で。れいむが 欲しがっているあまあまを人間に貰いにいっていたのだ。 しんぐるまざーれいむは、傷だらけのれいむの姿を見つけると、仰天し、涙を流して声を上げた。 「どぼじであまあまもっでないのぉぉぉ?! にんげんがらうばっでごいっでいっだでしょぉぉぉぉ?! ぞんなごどもでぎないのぉぉ?! まざがでいぶをゆっぐりざぜるぎがないのぉぉぉごのぐずぅぅぅ!!」 しかし、驚き、そして涙を流した理由は、傷だらけのれいむが、あまあまを持っていない事に対しての 物であった。 「ちが れ むは がんば ごめ ゆっ ちりょう ね」 掠れた声でしんぐるまざーれいむへの謝罪と、自己の治療を頼む傷だらけのれいむ。 しかし、しんぐるまざーれいむ達は。 「うるさいよ! やくたたずはゆっくりしんでね! しんだあとでおわびのあまあまをもってきてね!」 「ちにぇ! ちにぇ!」 「きょんにゃきゅじゅはころちちゃえびゃいいりょ!」 傷だらけのれいむへの怒りを露にして、殺してしまえ、とまで言った。 「ゆっ! それもそうだね! れいむのおちびちゃんはかしこいね! きっとおっきくなったらこんな ぐずとはちがうりっぱなれいむにそだつよ!」 「「ゆっへん! しょれほどでみょにゃいよ!」」 「じゃあさっさところすね! おちびちゃん! おかーさんのかっこいいところゆっくりみててね!」 「「ゆっきゅちみりゅよ!」」 傷だらけのれいむは、堂々と自分を殺す算段をつけている親子の会話を聞いていても全く動じなかった。 先刻から、身体の痛みも、聞こえる音も。どこか遠くの出来事のように感じてくるようになっていたから だった。 痛みが消えたわけじゃない。言葉が聞こえないわけじゃない。 ただ、それを理解する機能が失われかけているのだ。 ゆっせーのっ! ゆっ!! ゆゆ~ん! おきゃーしゃんのじゃんぴゅしゅっごくゆっきゅちちちぇるにぇ~! 仲の良さそうな親子の声が耳に滑り込んでくる。 しんぐるまざーれいむのあんよを、たった一つになってしまった目で見上げながら、れいむは思う。 あぁ、ゆっくりしてもらえなかった。 たよりなくてごめんなさい。 もっとゆっくりさせてあげたかったのに。 れいむは、しんぐるまざーだから。 かわいそうだから。 やさしくしてあげないとだめなんだよ。 かわいそうなれいむ。 やくにたてなくてごめんね。 れいむはもうしんじゃうけど。 れいむはきっと。 かわいいこどもたちといっしょに。 わらいあって、それでげんきに。 ゆっくりしていっ ぐしゃり、と。 しんぐるまざーれいむの足が、傷だらけのれいむの頭を踏み潰し、完全にれいむは息絶えた。 しんぐるまざーれいむは、子供達の前で誇らしげに胸を張る。が、次の瞬間。 「ゆ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! でいぶのぶりでぃなあんよがいだいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」 顔色を変えて飛びあがり、家の中をごろごろと転がりまわった。 原因は、傷だらけのれいむの歯である。人間の打撃は、れいむの目と表皮をずたずたにし、上側の歯の ほとんどをへし折ったが、下顎にある歯は一本たりとも欠けさせることはなかったのだ。ゲスゆっくりを 嫌っていた人間の執念が、しんぐるまざーれいむに牙を剥いたのだろうか。 しんぐるまざーれいむは子供達にあんよを舐めさせながら涙を流した。 れいむは思う。 それもこれも、全部役立たずのれいむのせいだ! 役立たずに見つけさせたこの家も、ゆっくりした自分には狭すぎてちっとも相応しくない! そして、れいむは未だにずきずきと痛むあんよでふらふらと立ち上がりながら、大声で叫んだ。 「ごんなゆっぐりでぎないどごろにいられないよ! でいぶはもっどゆっぐりでぎるおうぢをざがずよ!」 その言葉が死亡フラグだからか。 あるいは、因果応報という奴か。 常識的に考えれば、こんな所で大声を上げたせいかもしれない。 「「「「「「「「「「「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「「「うー! ゆっくりしね!!!!」」」」」」」」」」 突然、巣に大量のれいぱーありすとふらんが雪崩込んできたのだ。 れいむ一家はこの後、意気投合し結託したありすとふらんに犯され、子供を産まされ、子供を食べられ。 ちっともゆっくりできない数ヶ月を送った後に、朽ち果てて死んだ。 あとがき2 ゲスじゃないゆっくりにしんぐるまざー云々言わせてみる事を思いついたのでやってみた ゲスの始末は本題じゃないのであえて適当に このSSに感想をつける
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『れいむはすーぱーおかん:接触編』 30KB 愛で 観察 思いやり 愛情 仲違い 育児 飼いゆ 子ゆ 愛護人間 暇つぶしにどうぞ ・気が付いたら、れいむ愛で仕様になっていました。どぼじでこうなったのぉぉ!? れいむというだけビキィ! とくる鬼威惨は、他の作家さんのSSですっきりー! してね。 ・結局まとまりきらなくて二部に分かれてしまいました。接触編から始まり、発動編で完結です。 接触編は観察パート、発動編は虐待パートという仕様です。 愛でのみがいい、虐待のみがいい、という読者さんは、他の作家さんのSSで(ry ・どこかしら後味が残る話を目指しました。特に悪い方に。ひねくれ者でゴメンね! 特に発動編終盤は、自分以外の誰得仕様です。 ・その他ネタ被り、独自設定、意味不明な箇所など書き捨て御免ということで。 ・それでも読んでみる方は暇つぶしにどうぞ。話のネタにしてくれたら幸いです。 れいむはすーぱーおかん:接触編 軽率だった。 俺も、俺の金バッジ飼いゆのれいむも。 俺が気を抜いて戸締りをしっかりしなかった事も軽率ならば、 れいむが庭に現れた子連れの野良まりさに唆されたのも軽率だった。 最近は殆どの飼いゆが去勢されている。 家のれいむも小さいときに去勢処置をほどこしてあり、子供は生まれない。 しかしながら、「おちびちゃんはゆっくりできる」という本能的な衝動は、 いかに優秀な教育を経てきた金バッジゆっくりでも、完全に除き去ることはできないのだ。 俺は極力れいむから子供を想起させる事柄を遠ざけていたのだが、 時折見る寂しそうな寝顔と涙の跡に、やはりどうにかしてやろうかと考えていた、矢先の事。 初夏のよく晴れていた非番の日。無警戒に窓を開けて部屋の空気を入れ替えていた時だった。 その子連れのまりさは、無警戒に庭先で日向ぼっこをしていたれいむの前に現れたのだ。 「こんにちわだぜ、れいむ! ゆっくりしていってね!!!」 「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」」 「ゆ……ゆっくりしていってね!」 れいむは野良まりさの小汚い様に警戒していたが、まりさが連れていた子ゆっくり達に注意を削がれた。 子まりさが2頭、子ありすが2頭。そこそこ汚れてはいるが損傷は無い子ゆっくり達であった。 「「「「ゆっ、ゆっ、ゆ~、ゆっくち~!」」」」 「ゆわぁぁ、とてもゆっくりしたおちびちゃんたちだよぉ!」 れいむは初めて間近で見る子ゆっくり達に、本能を大きく揺り動かされたのだ。 俺が気づいた時には、れいむは野良の子供達と一緒に遊んでいた。 「れいむ! 何してんだ、早くこっちに来い!」 「おにーさん、おちびちゃんだよ。とてもゆっくりしてるよぉ!」 「れいむはまりさのおちびちゃんのおかーさんになったのぜ。 だからおちびちゃんのおとーさんのまりさもかいゆっくりなのぜ! ゆっくりよろしくなのぜ!」 俺のバカ! バカバカッ! 不注意にも程がある! 近年野良どもが、自分の子供達がいかにゆっくりしてるかを去勢されてる飼いゆにアピールして、 取入って番いになろうとする小賢しいケースが増えているって、セミナー受けたばかりだろっ! この場合、抑制された「ぼせい」を解放された飼いゆっくりから子供を引き離しても、 飼い主の言う事を聞かなくなってブリーダーでも匙を投げるという。 「「「「「ゆゆゆのゆ~♪ ゆっくりのひ~♪ まったりのひ~♪」」」」」 庭を見れば、れいむは野良の子ゆっくり達と共に、呑気に歌を歌っている。 思えば、れいむのあんなにゆっくりした表情は見た事が無かった。 どうせダメモトだ。一計を案じてみても、いいかもしれない。 「ゆわーい! きれいきれいになったのじぇ!」 「おちびちゃ~ん! はやくふーきふーきしないと、ゆっくりできなくなるよぉぉ!」 身体を洗われた子ゆっくり達は、自分が生まれ変わったかと錯覚したようにはしゃいでいた。 れいむにもこんな頃があったっけなぁ。イカンイカン、しみじみしてる場合じゃない。 「れいむ、おチビちゃんはゆっくりできるか?」 「ゆっくりできるよぉ! おにいさん、おちびちゃんたちをかいゆっくりにしてくれてありがとぉ!」 「まだチビ達は飼いゆっくりじゃない。チビ達を飼いゆっくりにできるかどうかは、れいむ、お前次第だ」 「ゆ……?」 「れいむは母親として、おチビ達を飼いゆっくりに相応しい、ゆっくりできるゆっくりに育てるんだ。 ゆっくりできないゆっくりに育ったら、飼いゆっくりに相応しくないとして、俺が始末する」 「そ、それはひどいよ! みんなれいむのおちびちゃんなんだよ! ゆっくりしてるんだよ!!」 「チビ達を始末されたくなかったら、子育て頑張れよ。応援はするが手助けはしない」 「ゆ、ゆ、ゆぇぇぇん!!」 甘えん坊気質のれいむを突き放したのは初めてだ。泣き顔にちょっと心が痛む。 チビ達に嫉妬したんじゃないよ? ホントだよ? 「おきゃーしゃん、なかないぢぇ。ありしゅがぺーりょぺーりょしてあげりゅ」 「あ、ずりゅいのじぇ! まりしゃもぺーりょぺーりょすりゅのじぇ!」 「おきゃーしゃんをなきゃす、くしょじじいはかえりぇー!」 「ぺーりょ! ぺーりょ!」 何か腹が立つが仕方がない。とりあえずはれいむにチビ達を任せ、食事を用意する。 ここでも一工夫が必要だ。 「ほら、食事だ」 「ゆ……? おにーさん、おちびちゃんのごはんさんがないよ?」 れいむ専用の器に盛られたのはゆっくりフード他、いつものれいむの食事だ。 それだけだった。れいむが不思議がるのも無理は無い。 「おチビ達の食事はこっちだ。あまり部屋を汚すなよ」 「ゆげぇ!? おにーさん、それ、ごはんさんじゃないよぉぉ!」 俺は基本的に好き嫌いしないので、家の生ゴミの多くは料理の際にでる野菜等のクズだ。 それをチビ達の数だけ器に盛ってやった。 「おにーさん! おちびちゃんがかわいそうだよぉぉ! ごはんさんをあげてよぉぉ!」 「ダメだ。俺は飼いゆっくり分しか飼いゆっくりの為の食事を用意しない。 どうしてもと思うなら、れいむの食事をチビ達に分けてやるとか、自分で考えろ」 「おにーさん、ひどいよぉぉぉ!」 「ゆゆ~ん? おやしゃいしゃんだじぇ!? おいししょ~!!」 「ありしゅ、おなかしゅいた! おきゃーしゃん、たべていいにょ?」 子ゆっくり達は待ちきれないとばかりに涎をダラダラ垂らしている。 普段よっぽど恵まれない食事だったのだろう。不満の声は無い。 「そ、それじゃ、いただきましょうね。ゆっくりいt」 「「「「すーぴゃーむーちゃむーちゃたいみゅ、はじまりゅよ!!!」」」」 食前の挨拶を無視して、一斉に目の前の生ごみに飛びかかる子ゆっくり達。 れいむは唖然として、目の前の食事に口をつけることができないでいた。 尻をブルンブルン振いながら生ゴミを貪り喰らうその様に、俺は目を背けた。食欲が削がれる。 「「「「むーちゃ、むーちゃ、しあわしぇ~!!!」」」」 「俺はゆっくりできないんで、あっちでご飯食べるね」 「ゆ!? ま、まって、おにーさん!」 「まずは飼いゆっくりらしい食事の取り方からかな? 子育て、頑張ってね」 俺はれいむ放し飼い用の部屋から出ると、こっそりのぞき窓で様子を伺った。 れいむの傍にいると、どうしてもれいむは俺を当てにするから。 少しの間、れいむはチビ達と自分の食事を見比べていたが、ようやく考えがまとまったようだ。 「お、おちびちゃんたち! ごはんさんのたべかた、おかーさんがおしえるよ!」 「ゆ? まりしゃたち、ごはんさんたべてるのじぇ?」 「もっとゆっくりできるごはんさんのたべかただよ。おかーさんのごはんさんをわけるから、 ゆっくりまっててね!」 れいむは自分の食事のゆっくりフードを一粒ずつ咥えては、チビ達の器に運んで行った。 見た事も無い食事に、チビ達の好奇心がくすぐられる。 「ゆぅぅ? とってもときゃいはなかんじの、ごはんしゃんなのにぇ?」 「おいしそうにゃにおいぎゃ、ぷんぷんしゅるのぜぇ!」 「ぺーりょ、ぺーりょ。うっめ! これめっちゃうっめ!!!」 子まりさが舌を伸ばして味わったゆっくりフードは、生まれて初めての甘みだった。 すかさず目の前のフードを一口で食べてしまい、とてもゆっくりとした表情を浮かべる。 それを見た他のチビ達も、配りきられていないフードを一様に貪る。 「「「「うっめ! めっちゃうっめ!!!」」」」 「どぼじでごばんざん、がっでにだべぢゃうのぉぉぉ!?」 思惑があっさり外れ、身悶えするれいむ。 しかし、チビ達は初めての甘味に収まりがつかない。 「おきゃーしゃん、もっちょ、ちょーだいなのじぇ!」 「おきゃーしゃん、たべにゃいの? だったりゃ、ありしゅがたべてあげりゅ!」 「「「「たべてあげりゅ!! うっめ! めっちゃうっめ!!!」」」」 「れ、れいむのごはんさんがぁぁぁぁ! ゆわぁぁぁぁぁん!! ゆわぁぁぁぁぁん!!」 結局、れいむが呆然とする中、れいむの食事はチビ達に全部食べられてしまった。 あまりの事に母親である事も忘れ、れいむが大粒の涙を流す。 理想の母親像をいつも夢見ていたんだろうが、現実は夢のように都合良くは無い。 大声で泣き叫ぶれいむの姿に、チビ達の反応も様々だ。 「おきゃーしゃんはよわむしなのじぇ! ぺーりょぺーりょしちぇあげるのじぇ」 「おきゃーしゃんも、ごはんしゃんむーちゃむーちゃしゅればよかっちゃのに」 「ゆぅぅ、ゆっきゅりできにゃいのじぇ。まりしゃが、わるいのじぇ?」 「おきゃーしゃん! ありしゅ、もうおにゃかいっぱい! だかりゃ、ありしゅのごはんしゃん、おきゃーしゃんがむーちゃむーちゃしていいよ!」 子ありすがれいむの器に生ゴミの残りを運ぶのを見て、他のチビ達もそれに倣う。 れいむの器には、いつもの御馳走の代わりに、生ゴミが鎮座した。 思わず後ずさるれいむ。腐ってるのもあったからなぁ。まあ食べてもゆっくりなら害は無い。 「「「「おきゃーしゃん、もうなかにゃいで、むーちゃむーちゃしちぇね!!」」」」 「た、たべるまえには、ゆっくりいただきます、っていうんだよ。わかってね。 ゆ、ゆっくり、いただきます」 れいむはとてもゆっくりできていないだろう表情で、生ゴミを口に収める。 瞬間、目を向いて冷や汗をダラダラ流す。ゆっくり用の食事に慣れた舌には堪えるだろう。 「おきゃーしゃん、どうしちゃの? ゆっきゅりしてにゃいよ?」 「むーちゃむーちゃ、しにゃいのじぇ?」 れいむはチビ達の手前、吐き気を抑えて生ごみを黙って飲み下した。 俺はれいむに感心した。並みの飼いゆっくりなら吐いていただろうに。 「……ぜー、ぜー。か、かいゆっくりのごはんさんはね、たべてるときはしゃべらないんだよ。 ごはんさんがこぼれてきたないし、まわりのみんながゆっくりできなくなるからね」 「ゆえー? むーちゃむーちゃしにゃいで、ゆっきゅりできりゅにょぜ?」 「おかーしゃん、とっちぇもときゃいはだっちゃよ。ありしゅもやってみりゅね!」 子ありすはれいむの器から生ゴミのカケラを取り、黙って食べる。遊び半分なんだろう。 れいむに倣って、黙って飲み下す。 「ごっくん。それにゃりー。おかーしゃん、ありしゅときゃいはにできちゃ?」 「とってもよくできたよ。ありすちゃんは、とかいはなかいゆっくりになれるよ」 「やったーっ!! ときゃいはー!」 れいむと子ありすは、共にゆっくりした気持ちを表した。 それを見て、他のチビ達も先の子ありすに倣う。 「ま、まりしゃもやっちぇみるのじぇー!」 「ゆあー、ありしゅもときゃいはになりゅー!」 「むーちゃ……まりしゃなにもいっちぇないにょぜ?」 チビ達は生ゴミを平らげ、結局れいむは殆ど食事を取らなかった。 空腹なんだろうに、チビ達と肌を合わせて眠るれいむは、とてもゆっくりしていた。 俺は出勤の準備を済ませて、れいむ達の部屋に食事を運ぶ。 部屋は散らかり、チビ共の「うんうん」もそこら中に落ちていた。 れいむは好き好きに遊ぶチビ達に振り回されてる様で、1頭だけゆっくりしていなかった。 普段から部屋の片づけは徹底させていたので、言う事を聞かないチビ共に困惑してるんだろう。 「おはよう、れいむ。おチビちゃん達」 「ゆ!? ゆ、ゆっくりおはよう、おにーさん! たすけてぇ! へやがかたづかないよぉ!」 「にんげんしゃん、だれにゃのじぇ?」 「きっと、おかーしゃんのどれいなにょよ。ごはんしゃんもってきちゃのよ」 「しょーなのきゃだじぇ。おい、くしょどれい! はやきゅごはんしゃんよこしゅんだじぇ!」 「お、おにーさんはどれいじゃないよぉぉ! どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉ!?」 物忘れの激しいチビ達の笑顔と俺の怒り顔を見比べながら、慌てふためくれいむ。 俺は昨日と同じように飼いゆの食事と生ゴミを用意しながら言う。 「れいむ。食事はお前がやりたいようにしろ。平等に分けるも、独り占めしてもいいんだからな。 昼食の分もそうだ。朝のうちに全部食べさせてもいいが、俺は夕方まで帰ってこれないから」 「おにーさん……」 「困った顔をしてもダメだ。まだまだあるぞ。部屋の片づけとうんうんの躾。 俺が戻るまでには部屋に散らばったチビ共のうんうんも始末しておくんだぞ」 「おにーさ……」 「くしょどれいは、おきゃーしゃんを、いじめるにゃー!」 「いじめるにゃー! しにぇー!」 ガッ! ガシャンッッ!! 「「「「ゆぴぃぃぃっ!!」」」」 ついムカついて、怒りをれいむの玩具にぶつけてしまった。 俺に蹴られたゆっくり用の車「すぃー」の玩具は壁に当たると、大きな音を立ててバラバラに壊れた。 れいむは声も無く震え、チビ達はそろって「おそろしーしー」をたれ流している。 「食事以外の時は、チビ達に飼い主とは何かという事と、言葉使いを教えるんだ。 もう赤ゆ言葉でも無い大きさだろう。毎日しっかり教育するんだ」 「……」 「返事はどうした。もう母親ごっこは終わりか、れいむ?」 「ゆ、ゆっくりりかいしたよ! れいむはおちびちゃんたちを、りっぱなかいゆっくりにするよ!!」 「言葉だけじゃないのを期待してるよ、れいむ。それじゃ、食事おいてくからな。行ってきます」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 部屋から出た後、こっそりと覗き窓から中を覗く。 れいむがゆっくりと仕切る朝食を、チビ達は興味深く楽しんでいるのを確認して、俺は家を出た。 野良のチビ達がれいむの子供達になって10日も過ぎた頃。 「おにーさんにごあいさつだよ! おにーさん、ゆっくりおかえりなさい!!!」 「「「「おにーさん、ゆっくりおかえりなさい!!!」」」」 「ゆっくりただいま!!! よくできたね、おチビちゃん達」 チビ達は赤ゆ言葉も取れ、「飼い主」がどういう存在かって事も表面上は解っているように見えた。 トイレの躾も行き届いているし、部屋もそこそこ片付けてるようで、散らかりっぱなしではない。 黙ってる俺の前で、れいむはチビ達に食べ方を教え続け、今チビ達はそれほど食べ物を食い散らかさない。 れいむが均等に分けた飼いゆ用の食事と生ゴミを、特に不満を述べるでもなく食べている。 「本当に大丈夫なのか、れいむ? 無理なら遠慮するなよ。俺が全部始末をつけるから」 「だいじょーぶだよ、おにーさん。れいむは、おちびちゃんたちをりっぱにそだてるよ」 聞く度にこう言うが、れいむは慣れない子育てのおかげで殆どゆっくり出来ていなかった。 れいむは本当によくやっているが、実のところチビ達もあまりゆっくりしてないのが見て取れる。 野良ゆが飼いゆの形だけを真似ているだけなので、ゆっくりできるわけないのは当然だが。 ここで今日のイベントといこうか。俺は包みから買ったばかりの玩具を取り出す。 「じゃん! これ、何ーんだ」 「ゆわぁぁ! すぃーだぜぇ!」 「とってもとかいはな、きれいないろのすぃーだわ!」 俺が買ってきたのは、この間壊してしまった「すぃー」の玩具の代わり。 キズの無い新鮮な素材感が、チビ達の目を引く。 「このすぃーはおチビちゃん達に買ってきたんだよ。みんなで仲良く使ってね」 「おちびちゃんたち、おにーさんにありがとうしようね」 「「「「ゆっくりありがとー、おにーさん!!!」」」」 チビ達の喜びように、れいむも久しぶりにゆっくりとしていた。 でもね、いつまでゆっくりできるかな? 試すようだけどゴメンな。 「まりささまが、いちばんのりなのだぜぇ!」 「ゆあー! ずるいのぜぇ!」 「ありすたちものせなさいよ!」 子ゆっくり用の「すぃー」なので、チビ達は1頭しか乗る事が出来ない。 1台の「すぃー」で、4頭のチビ達がどうやってゆっくりするというのか。 俺はれいむにここを任せ、食事の用意に向かった。 「ゆんやぁぁぁ! おにいさん! おにいさん! たすけてぇぇ!!」 俺が食事を持って部屋に戻る頃には、チビ共は「すぃー」が元で大ゲンカをしていた。 荒事に慣れていないれいむは酷く狼狽しているが、目論見通りだ。 「ひとりじめは、げすのすることなんだぜぇ!!」 「まだまりさのばんはおわってなかったのぜ! ころばすなんてひどいのぜぇ!!」 「やめなさいよ! こんなのとかいはじゃないわぁ!!」 「ゆわーん! ゆわーん! ゆっくりできないよぉぉ!!」 れいむが助けを求め続けるが、俺は黙って食事を用意するだけだ。 いよいよ過熱してきたチビ共の取っ組み合いに、れいむが恐る恐る声をかける。 「お、おちびちゃん。けんかはだめだよ。ゆっくりしt」 「おかーさん、まりさがひどいのよ。すぃーにぶつかってたおすなんてとかいはじゃないわぁ!」 「なにをいうのぜ! ひとりじめするげすをからだをはってとめたのぜ!」 「まりさのばんはもうすぐおわりだったのぜ! まりさはよこどりされたのだぜ!」 「ひとりじめも、ぶつかるのも、おおごえも、ゆっくりできないよぉ! ゆわーん!」 れいむが制止しようとしても、チビ達は止まらない。 そうしているうち、早くも期待していた事が起こった。 びりりりっ! 「ゆんやぁぁぁぁっ!? まりさのおかざりさんがぁぁぁっ!!」 まりさの帽子のお飾りに噛みついたもう一方のまりさが、お飾りを引きちぎってしまったのだ。 お飾りはゆっくりにとって自分の片割れに等しく、お飾りの状態次第でゆっくり同士の見る目も変わる。 帽子のお飾りは半分近く裂けてしまっていた。慟哭するまりさにチビ達の反応は冷たい。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ばでぃざのぎらめぐおがざりざんがあ゛あ゛あ゛!!」 「いいきみなのぜ! ひとりじめしようとしたげすには、おにあいなのぜ!」 「おかざりをやぶるなんていなかものだわ! でもそのおかざりは、もっといなかものだわ!!」 「ゆわぁぁん! おかざりやぶれたぁ! ゆっくりできないよぉぉ!!」 れいむは俺の方をオロオロしながら見続ける。俺は黙って、れいむに頷いた。自分で決めろ、と。 俺の意を理解したのか、れいむは意を決した硬い表情で、チビ共の方に向かった。 「ゆっくりできないわるいおちびちゃんは、れいむがぷくーするよ! ぷくーっ!!」 「「「「ゆわぁぁぁっ!!」」」」 初めて見せるれいむの威圧に、チビ共は一斉に驚いて動きを止めた。 静かになったところで、れいむがまりさ達に怒鳴り声を浴びせる。 「ひとりじめも、よこどりも、けんかも、ぜんぜんゆっくりできないよ!! まりさはまりさに、まりさもまりさに、それからみんなにあやまってね! いますぐだよ!!」 「ま、まりしゃは、おかじゃりをやぶられたんだじぇぇぇ! なんであやまりゅのじぇぇぇ!?」 「まりさがひとりじめするからなんだじぇぇぇ!! まりさはわるくないんだじぇぇぇ!!」 「ぷくーーーっっ!!!」 「「ゆわぁぁぁぁんっ!! ご、ごべんなざいぃぃぃっ!! ごべんなざいぃぃぃっ!!」」 お互いのまりさが謝った事で、このケンカは決着となった。 だが、俺が見たいのはコレジャナイ。もっと、根の深い部分だ。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛ん゛! おがざりざん、なおっでぇ! なおっでぇ! ぺーろ、ぺーろ」 お飾りの破れたまりさは泣きながらお飾りを直そうと舌を這わすが、まるで効果が無い。 他のチビ達は遠巻きに悪態をつくばかり。そんなまりさに近づくれいむ。 「なかないでね。おかざりがやぶれても、おちびちゃんは、れいむのおちびちゃんだからね」 「お、おかーしゃ……ゆわぁぁぁぁぁん!!!」 スゲエ。何このゆっくりらしからぬ母性。本能によく耐えた。感動した。 れいむがチビまりさを避けるのも無理は無いだろう程度に考えていたが、予想以上の結果だ。 おお、泣きながら「すーりすーり」し合うれいむとチビまりさの、何とゆっくりしてることか。 そして、それを見つめる他のチビ共も、それぞれ違った反応を見せている。上出来だ。 「ケンカはゆっくりできなかったね。さあ、食事にしよう。みんなぽんぽん空いたろう」 れいむが母親の自覚を持って行動した事に満足した俺は、 これからの展開を色々と予想しながら、れいむ達との食事を楽しんだ。 2ケ月も経てば、テニスボール大だったチビ達も成長し、バレーボール程度にはなっていた。 ただ、性格についてはそれぞれ偏ってきたようだ。 以前ケンカに勝った方のまりさは、チビ共の中で一番成長していた。強まりさと呼称しようか。 その分増長も激しく、自分が姉妹の中で一番だと自画自賛する事も。 最近はれいむが躾けたことも守らず気ままにゆっくりしてる。実にゆっくりらしいゆっくりだ。 ケンカに負けてお飾りが破れたままのまりさは、弱まりさと呼んでおこう。 いつも強まりさの身勝手に抗議こそするが、力に訴える事はしなくなった。 逆に強まりさにケンカを仕掛けられても一方的にやられてる。苦手意識が芽生えたのか? 威勢のいいありすは何かと姉妹達に文句を言う。しかも一言多い。強ありすでいいかな。 まりさ同士のケンカを止めるのもこのありすだが、時にケンカの発端にもなったりもする。 姉妹一の「とかいは」を自認し、れいむの手伝いもこのありすが率先してたりする。 ありすの片方は泣き癖がついてしまい、何か不満があるとすぐ泣いてしまう。弱ありすでいいな。 普段はあまり喋らず、他ゆんと遊んだり手伝いはするものの、自分から他ゆんを誘うことは無い。 気が進まない場合は「とかいはじゃないから」と言い訳をして逃げることもある。 そして、れいむはチビ達全員を分け隔てなく「かわいいおちびちゃん」として溺愛していた。 最近では子育て上手を自慢する生意気さも見せ、心からゆっくりしている様子だ。 だが、盲目的なところが多々見られ危険な兆候なので、もう少し自覚を持ってもらいたい。 さて、これだけ長い事接していれば、ゆっくりの本音もチラチラ見え隠れするというもの。 ズルズルとこの生活を続けて行くのは誰の為にもならない。火を見るより明らかだ。 だが俺は裁定者になるわけにはいかない。そうならない事を願っている。 「う!? うぐ……」 れいむ達と過ごしていたある昼下がり。俺は胸の辺りに痛みを伴う違和感を感じ、その場に倒れ伏した。 「おにーさん? どーしたの、おにーさん!?」 「俺」からの返事は無い。何度呼びかけても反応が無い「俺」に、れいむは酷く狼狽する。 チビ達はれいむの後ろで黙って様子を伺っていた。 「お、おにいさんが、えいえんにゆっくりしちゃったよぉぉぉ!! ゆわぁぁぁん!!」 「「「「ゆぇぇぇえ!?」」」」 チビ達は、微動だにしない「俺」の身体の周囲に近づき、ゆっくりと観察する。 れいむはその場で泣き暮れるばかりだ。 「そうよ! こういうときはでんわさんをつかうのがとかいはよ! まりさ、おにーさんのおしりのでんわさんをとってちょうだい!」 「ゆ? これなのぜ?」 強ありすが示した、尻ポケットから頭を出していた携帯電話を、弱まりさが咥えて運ぶ。 とはいえ、いざ携帯電話を前にし、強ありすは使い方までは解らなかった。 「おかーさん、なかないで! でんわさんをつかっておにーさんをたすけるのよ!」 「ゆぐっ! で、でんわざん、ゆっぐりじないでおにーざんをだずげでね!」 「そうはさせないのぜぇ!!」 突然飛び跳ねてきた強まりさが、床に置かれた携帯電話を弾き飛ばした。 携帯電話はタンスと床の間に発生した薄い隙間に吸い込まれてしまう。 「おにーさんもしょせんこのていどなのぜ。つかえないくずどれいだったのぜぇ!!」 「ま、まりさ!? ど、どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!?」 「どういうつもりよ、このいなかもの!!」 「こんなときに、ふざけてるばあいじゃないのぜぇ!」 強まりさの行動と態度は、家族の非難を浴びた。しかし、強まりさは余裕の表情を崩さない。 勝ち誇るように「俺」の身体に乗ると、調子づいてピョンピョン飛び跳ねる。 「ゆっへっへ、ふざけちゃいないのぜ。なにがかいぬしなのぜ。せいっせい! したのぜぇ!!」 まりささまをかいゆっくりにするためのどうぐが、なまいきだったのぜぇ!!」 「あやまってね! れいむたちをゆっくりめんどうみてくれたおにーさんに、あやまってね!!」 「やなのぜ、くそばばあ! おまえもうるさくてほんとうにゆっくりできなかったのぜ! おまえもかいゆっくりになるためのどうぐなのぜ!」 「まりさぁ! おかーさんにあやまるのぜぇ!!」 「まりささまのちからなら、にんげんたちぜんぶくそどれいにして、もっとゆっくりできるのぜ! おまえらみんな、まりささまのこぶんにしてやってもいのぜ! ゆーっはっはっは!!」 「……こぶんになるつもりはないけど、ありすはまりさにさんせいよ」 「俺」の身体に弱ありすが飛び乗って、強まりさの横につく。 続けざまの、後先考えないチビ達の反逆に、れいむはうろたえるしか無かった。 「これはゆっくりんどりーむだわ! ありすはこんないなかくさいのはもうごめんだわ! これでありすは、もうなかなくていい! もっととかいはなゆっくりをてにいれるのよ!」 「ありすまでそんなことをかんがえていたのね! このいなかものども!!」 「どっちがいなかものよ! おにーさんもおかーさんもいちいちいなかくさいのよ! ありすたちがかいゆっくりになるための、ただのどうぐのくせにうるさいのよ! そんなおかーさんにべったりのありすもほこりをかぶって、とってもいなかくさいわ!」 「ど、どうぐ……! そんな、おちびちゃんたち! うそだよね! うそだよね! みんなであんなにゆっくりしてたのに、うそだよねぇぇぇっ!!」 れいむは裏切られた。れいむは信じられなかった。れいむの頬を涙が伝う。 しかし、「俺」の身体の上にいた強まりさは、そんなれいむに飛びかかった。 ぺちぃん! 「ゆぎゃぁぁんっ!!」 「「おかーさん!!」」 強まりさの体当りを受け、後ろに転がるれいむ。 弱まりさと強ありすが助け起こすが、れいむは目を回していた。 「まりささまにくちごたえはゆるさないのぜ! おそれいったら、どげざするのぜ!」 「まりさぁぁぁ!! もうゆるさないのぜぇぇぇっっ!!」 弱まりさは大声で叫ぶと、強まりさに飛びかかった。 横からの攻撃は強まりさにとって、不意を突かれた格好になり、直撃を受ける。 ぽよよよんっ!! 「ゆげぇぇぇっ!?」 体勢を崩し転がっていく強まりさに、すかさず弱まりさが追い打ちをしかける。 弱まりさは感極まったのか、優勢でありながら涙を流して攻撃を続けた。 「おがーざんは、おにーざんは、どっでもゆっぐりじでだんだぁぁっ!! おがざりがやぶれだまりざでも、やざじぐじでぐれだんだぁぁっ!! ぜっだいに、ゆるざないのぜぇぇっ!!」 「ゆげっ! ゆげぇっ! よわむしまりさが、ちょうしに、のるなだぜぇっっ!!」 強まりさと弱まりさは本格的に取っ組み合いを始めた。 もはやケンカと言えないほどの激しさで、強ありすは間に入る事ができないでいた。 「ゆげぇぇっっ!!」 「よわむしのぶんざいで、まりささまにかてるとおもったかなのぜぇ!?」 弱まりさの威勢が良かったのは序盤だけで、それ以降は体格に優れた強まりさが逆転した。 そして、体重の乗った強まりさの押しつぶしが決まり、弱まりさは口から餡子を吐きだす。 強まりさは止めとばかりに、弱まりさを潰そうと、ひと際高く跳んだ。 「まりささまのせいっさい! なのzゆぐぇぇぇぇっっ!!?」 強まりさは空中で吹っ飛ばされた。壁に叩きつけられ、あまりの痛みに悶絶する。 起き上がった強まりさは、自分を吹っ飛ばした相手の姿に、愕然とした。 「れいむは……ゆるさないよ! ぜったいにゆるさないよ!! おちびちゃんをきずつけるゆっくりできないゆっくりは、せいっさい! するよ!!」 「お、おかーしゃ……」 二の句を告げる間もなく、強まりさは怒りの化身と化したれいむに押しつぶされた。 そのまま、強まりさの上で体重を乗せて飛び跳ねる。 「おまえなんかにおかーさんとよばれたくないよ! このげすのらがっ!!」 「ゆぎゃぁぁっ!! ゆぎゃぁぁぁぁっ!! ゆぎゃぁぁぁぁぁっ!!」 「ゆわぁぁぁぁん! こんなの、ゆっくりできないわぁぁ!!」 弱ありすは形勢が逆転したのを見ると、いつものように泣いて逃避した。 昨日までだったら、れいむが親身になって慰めたものだが、もはや手遅れだった。 「おにーさんからおりろっ!! このげすのらっ!!」 「ゆんぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」 弱ありすもれいむに吹っ飛ばされた。 その身体はトイレをひっくり返し、うんうんとしーしーに塗れてしまう。 「ゆぎゃぁぁぁぁん!! くしゃい! くしゃいよぉぉぉっ!!」 「いなかもののありすにはおにあいよ! だいじょうぶ、まりさ!?」 「……どうにかなのぜ。やっぱりまりさたちのおかーさんはすごいのぜ」 「そうよ。ありすたちのおかーさんは、さいこうにとかいはだわ」 「お前達も最高の子供たちだよ。れいむを信じてくれて、ありがとうな」 「「ゆ!?」」 れいむの「せいっさい!」によって強まりさは半殺しの目に遭っていた。 怒りの収まらないれいむは正気を失ったようで、強まりさが必死に取り繕おうとしても無駄だった。 「ぜったいにゆるさないよ!! ぜったいにゆるさないよ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」 「そこまでだ。れいむがあんよを汚す事は無い」 れいむは突然の「おそらをとんでるみたい!」な感覚に、思考が停止したようだ。 俺の腕の中でキョトンとした顔をしている。 「ゆ……? おにーさん? おにーさんなの?」 「面倒をかけたな、れいむ。この通り、大丈夫だよ」 「おにーさ……おにーさぁぁぁぁぁぁんっっ!!」 泣きじゃくるれいむを抱く俺の姿に、チビ達は揃ってキョトンとした顔をしていた。 俺は胸の辺りに痛みを伴う違和感を感じ、その場に倒れ伏した。フリをしただけだった。 三文芝居だが、ゆっくり達の本音を引き出す為には、どうしても必要だったからだ。 結局、欲深い本性を現したのは2頭。残りの2頭は最後までれいむの子供であった。 最悪の場合、増長したれいむを潰す事まで考えていた俺には、嬉しい結果だ。 だが、まだ終わっていない。俺は裁定者になるわけにはいかない。 「れいむ。お前を道具と罵ったまりさとありすはもう手遅れだ。 小さいときに自分だけゆっくりするのが目的となったゆっくりは、どうやっても直らない」 「おにーさん……」 「れいむが決めろ。チビ達の母親として、役目を果たせ。俺はれいむの判断に従う」 俺はれいむをそっと床に下ろした。 いや、正直、判断を任せるとかヒヤヒヤなんだけどさ。 まあ、れいむなら答えを出せるだろう。出せるかなぁ。俺、信じてるから。 「ゆひぃっ!!」 部屋の隅に追いやられた強まりさと弱ありすは、間近に迫ったれいむに悲鳴を上げる。 れいむは、大粒の涙を流して泣いていた。 「かぞくと、にんげんさんと、みんなでゆっくりできないゆっくりは、かいゆっくりになれないんだよ。 おまえたちは、れいむのおちびちゃんじゃないよ!!」 「お、おかーしゃん、ちがうのぜ! これはなにかのまちがいなのぜ!」 「ありすは、おかーしゃんのありすよ、そんなこといわないでぇぇ!」 「いまさらおまえたちにおかーさんなんてよばれたくないよ! かんっどう! だよぉぉっ!! ゆ、ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っっ!!」 裁定は下った。俺は言い訳とその場だけの謝罪を繰り返す、強まりさと弱ありすの口をガムテープで塞ぐ。 そして2頭を抱え上げたまま、弱まりさと強ありすと向きあう。 「こいつらは飼いゆっくりになれなかった。れいむと親子になれなかったんだ。 もうこいつらはお前達と一緒に住めない。お別れだ。ひとこと言ってやれ」 「あばよ、なのぜ……」 「みんなでゆっくりしたかったわ……」 弱まりさと強ありすの目には涙が滲んでいた。 ブルンブルンと物言えぬ強まりさと弱ありすが身悶えするが、つねり上げて大人しくさせる。 「れいむを慰めてやってくれないか? お前達より、ずっとずっと悲しいんだろうから」 「まかせるのぜ! おかーさんには、まりさとありすがついてるのぜ!」 「とかいはなわたしたちが、おかーさんをいっぱいゆっくりさせるわ!」 そう言って、弱まりさと強ありすは号泣するれいむの元へ跳んで行った。 あれから間もなく、弱まりさと強ありすは金バッジ試験に合格した。強弱はもういいだろう。 野良から金バッジをとるなんて奇跡的だと秘訣を尋ねられたが、面倒なんでノーコメントで通した。 そもそも街野良の大半は元飼いゆの餡子を継いでいるという。2頭にはいい素養があったんだろう。 俺が大きめに直してやったまりさの帽子のお飾りは、今や大きく育ったまりさにピッタリだった。 それにしても何か体型がドスっぽくなったような。気のせいであってくれ。 口が悪かったありすは、すっかり落ち着いて、気配り上手になっていた。 ああ、でも隙あらば携帯電話を使おうとするのはやめてくれ。色々おっかない。 れいむは、相変わらずだ。未だに自分より大きくなったまりさやありすを子供扱いしている。 でも、まりさもありすも満更でもないらしい。餡子がつながって無くても本当の親子だった。 季節が巡り、新しい春が来た。俺と、れいむと、れいむの子供達はゆっくりと過ごしていた。 「ゆ~、おにーさん。れいむは、りっぱなおかーさんになれたかな~」 「立派すぎて俺のカーチャンと交換したいぐらいだ」 「れいむをおかーさんとよんでいいんだよ。おにーさん」 「調子に乗るな」 俺達は庭先で日向ぼっこしながらじゃれ合っていた。 まりさとありすはプランターから芽吹いた花の芽を見つけ、跳び上がって喜んでいる。 「おにーさん、おちびちゃんたちにおちびゃんはできないんだよね」 「ああ、バッジ取る時に去勢もしたからなぁ。また子育てがしたいのか?」 「れいむはもうじゅうぶんだよ。ただ、おちびちゃんたちにもおちびちゃんがいればいいのにね。 おちびちゃんたちなら、きっとゆっくりしたおちびちゃんをそだてられるからね」 「実はだな、あいつらの去勢した時、精子餡バンクに登録しといたんだ。高くついたが。 つまり、あいつらが望んだとき、選ばれた母体を介してあいつらのおちびちゃんが生まれるんだ」 「きいてないよぉぉぉ!! どぼじでおぢびぢゃんづぐらないのぉぉぉ!?」 「あいつらはきっと、まだれいむのおちびちゃんで有りたいんだろう。 案外れいむがおばーちゃんになっちゃうんで、気にかけてるのかもな」 「ゆ……おばーちゃん。れいむ、おばーちゃんになるのね」 「まあ深く考えるな。ほら、あいつらが呼んでるぞ」 れいむに決断を担わせたのは、結果として正解だった。 俺が全てを仕切っていたら、れいむはチビ達の信用を勝ち得ず、最悪全員ゲス化しただろう。 やっぱり親たるもの、子供に一目置かれて何ぼだからね。 「おにーさーん! おちびちゃんたちが、おにーさんのおちびちゃんいつできるのだって!」 「アーアーアー、聞こえない聞こえない」 軽率な俺とれいむの招いた不注意のおかげで、俺も、れいむも、れいむのおチビ達も、 結果的に以前よりゆっくりすることができた。 俺はれいむ達の飼い主として、家族の一員として、共にあり続けることができるように願った。 発動編に続く